第152話 バレッタの街・3
話をはぐらかそうとした師匠に苦笑しながらもカストルさんが話し出す。
「実はミルトンの冒険者ギルドの新しいギルマスから連絡が入ってな、恐らくお前さん達がこの街に来るだろうからと伝言を預かっているんだ」
「スピカから?」
「ああそうだ。王都からの客が数日前にミルトンに到着し、冒険者ギルドに来たそうなんだが態度が傲慢で癪に触ったのでひたすら黙秘を続けたら怒って出ていったそうだ」
....なんだそれ?子供か??え、騎士なんだよね?
「ガキかよ」
師匠もどうやら同じ事を思ったようで、何とも言えないような表情をしている。
「ギルドを出てからは他の冒険者や、街の住民に聞き取りをしているみたいだけど殆どの者が口を閉ざしたり、それとなく話を逸らしてるみたいで連絡を此方に寄越した時点ではまだバレッタの街に来ている事は知られていないようだ」
「.....そうか。王都から騎士団が来るまでにこの国を抜けれれば御の字だと思っていたが無事に行けそうだな....」
正直ミルトンの街の人達が協力してくれるなんて思ってなかったからなんと言うか....不思議な感じだなぁ。ぶっちゃけ冒険者なんて率先して私の情報垂れ流ししそうな感じなのに。意外だったわ。
「....シリウス達はこれからエルフの国へと向かうんだろう?」
「ああ、そのつもりだ。あそこなら俺が連れて行ってやれるし、エルフが許した相手しか国には入れないからな。万が一エルフの知り合いを解して侵入出来たとしてもエルフの国で人攫いでもやろうとすればそいつらを国に引き入れたエルフも同罪で国を追放されるから....流石にそんな馬鹿な事をするエルフは居ないだろうからな」
「....確かにな。だが馬鹿はどこにでも居るもんだぞ?」
「まぁな」
「.....師匠、エルフの国にはそんな法律があるんですか?」
「ん?ああまぁな。いくらエルフの国が不可侵の国に指定されてて中に入れなくても、中から手引きされたら抜け道はあるからな。だから同族を裏切ったエルフに対してエルフの国は厳しい罰を与えているんだ。そうでなければエルフの国なんて今頃どこかの国に併合されてても可笑しくはないだろうからな」
.....うーん....確かに人間だけではエルフの国に入れなくても手引きするエルフが居れば確かに簡単にエルフの国に侵入出来ちゃうもんねぇ.....でもエルフの戦闘力は普通の人より遥かに強くて強大だ。そんな簡単には陥落しないと思うけどな。
「ま、エルフは確かに人より魔力も戦闘力も強いが皆が皆そうじゃない。人よりも弱い子供もいれば老人だっている。数が圧倒的に多い人に一斉に掛かってこられたらいくらエルフの国でも無理だろうな」
「.....そう言うもんなんですねぇ....」
「そうだな。まぁ、取り敢えず今現在の状況がわかって助かったよカストル」
師匠がカストルさんを振り返る。
「じゃあ明日にはこの街を出るのか?」
「.....そうだな。魔獣の買取金額が明日の午前中に出るらしいからそれを貰ったら出る予定だ。其までは買い出しとかしとくよ」
「了解した.....もしこの街にも騎士団が来たらまぁ上手い具合に誤魔化しといてやるよ」
そう言って私の頭をポンポンと優しく叩いた。
カストルさんはどこまでの事情を聞いているんだろうかとふと気になったが、結局バレッタの街を出るまでに聞くことはなかった。
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