第143話 雨宿り・1
今日は師匠から提案をされた修業の一貫の討伐依頼で近くのミルトンの街から2時間ぐらい先にある山に魔獣を狩りに来ている。
本日の獲物は" 火熊 " 。その名の通り火の属性の魔法を使ってくる熊なのだそうだ。
火熊の討伐ランクはCランクで、一応私でも討伐可能な魔獣なのだそう。ただし基本的にはパーティ推奨の討伐対象なのでソロで面と向かって行く冒険者は余りいないのだとか。まぁ私の場合は修業の一貫なので一人でもいっちゃうけどね。と言うか厳密には一人じゃないしね。
「ね、黎明。火熊の気配とかってわかる?」
『.....いや....魔獣が接近する気配はわかるが個体毎に区別するのは難しいかもしれない』
黎明からはそんな返事が返ってくる。うん、そうだよね~!大丈夫、聞いてみただけだからね!
「じゃあ取り敢えず山頂に向かって歩きながら出てきた魔獣を片っ端から討伐していきますかね!」
勿論此方を襲ってきた魔獣に限るけど!
それから2時間程あるいて山の中腹ぐらいまでは来れただろうか?その間に襲ってきた魔獣は討伐して無限収納へときちんと納めてある。けれど出現した魔獣は比較的小型の物が多かった気がする。大きくても狼系ぐらいかな?
「うーん....師匠に言われたから弓と剣の両方で試してるけど、やっぱり弓は遠方の魔獣を狩るには良いけど接近戦には不向き過ぎるよね。つい魔法を使いそうになっちゃう....」
『まぁそれはそうだろう。自分のテリトリー内にまで接近されたなら素早く魔法か剣で切り捨てた方が早いからな』
「だよねぇ.....ただ遠くの物を狙うとやっぱりコントロールが甘くなると言うかね」
止まってる的ならまだしも動いてる的を狙うのは本当に難しいかもしれない.....師匠はよくあんなにポカスかポカスか当てるよねぇ....?
『エルフは昔から弓が得意な種族だからな。そんなのと弓を始めたばかりの主を比べても仕方がないと思うが....?』
「まぁね。確かにそうなんだけどさ~……出来ないとこう悔しいと言うか」
『ならば練習するしかないだろう?』
そう。そうだよね~……練習。
そうこう考え込んでいるとポツリと水が頭上から頬に落ち、思わず空を見上げるといつの間にか真っ黒い雲に覆われていて雨が降りだしそうな空模様になっていた。と言うか降って来てない?
考えている内に雨がポツポツと降りだして来て、私は慌てて雨宿り出来そうな岩場がないかを黎明に確認するとすぐ近くに横穴があるそうで、私達は慌ててその横穴を目指して走り出した。
雨は段々酷くなり、横穴に着く頃には土砂降りになっていて洋服も靴もびしょ濡れだった。
「うわ~びしょ濡れだ~」
バケツの水を被ったかのようにびしょ濡れで洋服が身体に張り付いて気持ちが悪い。
「【クリーン】」
洗濯機の脱水機をイメージしてクリーンを掛ければ水分を一気に飛ばして雨に濡れる前の状態へと戻る。もうね、最初からこうしておけば洗濯とかやらなくて済んだんじゃないかって今頃思うんだよね。
「.....それにしても凄い雨。山の天気は変わりやすいって言うけど....まだ火熊討伐してないんだけどなぁ.....」
このまま雨が止まなかったら仕方ない、今日は帰るかな?
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