第144話 雨宿り・2
通り雨程度かと思っていた雨は思ってた以上に降り続いている。降り始めから1時間ぐらいは経っただろうか?雨宿りをしている横穴から少しだけ頭を出して空を見上げてみても、まだ黒い雲はこの山の上空に影を指し、雨は止みそうにもない。
「うーん....これ通り雨じゃなくて、本降りになりそうじゃない?」
もしそうなら今日の討伐は諦めて街に戻った方が良いかもしれない。討伐依頼の期限はまだまだあるのだから、雨の中無理に探す必要はないだろう。そう言った引き際も大事だと師匠は言っていたしね。
それに自分なら街の近くまでは転移で戻れるから問題ないしね。流石に入退場のチェックしてる門の中に転移で入る訳にはいかないし....。
「黎明、あと1時間ぐらい待って止まなかったら今日はもう帰ろうか?」
『リンがそれで良いなら構わない』
「じゃ、そうしよう。それまでお茶でもしようか。森の中でお茶なんて滅多に出来ないし、待つ時間暇だしね....取り敢えずお茶してる間に魔獣が来ないように結界張っておこう!」
チート能力の使い方が些か間違った方向に使ってるようにも感じるけど本人がそれで良ければ良いのだ!
無限収納から野営用に準備していた敷物を出しその上に小さなテーブルを置き作り置きして無限収納に入れていたコーヒとお菓子を取り出す。勿論お菓子は黎明と私用にそれぞれの好みの物を用意してある。
雨が降って少しだけひんやりとした空気に温かいコーヒーが身体を暖めてくれる。まぁでも本当は紅茶の方が身体を暖めると言う点では良いのだけど。
「.....けどこうのんびりとコーヒー何か飲んでると火熊を狩りに来たって言うよりもピクニックに来たって感じがするわね」
『ピクニックとは?』
「ん?ああ、前世で住んでた国では自然の中でお弁当を食べたりしてのんびりする事をピクニックって言ったのよ。死ぬ前までは仕事とか色々忙しくてこうしてのんびりする時間がなかったけど、子供や学生の頃は親とか友人達とよく行ったりしたのよね」
『ふむ。リンの住んでいた国はそんな娯楽があるのだな』
「.....娯楽.....そうね、勿論それだけじゃなくて此方で言う野営みたいなのもあったわよ?向こうではキャンプって言うんだけどね....」
黎明と話すほんの他愛もないをしているとあっという間に時間は過ぎて、雨もいつの間にか止んでいた。空を見上げれは雲の隙間からは陽の光も木々を照らしていて雨の名残の水滴をつけた草花がその光でキラキラとしていた。
「これだけ雨が降った後じゃ火熊もなかなか見つけられないだろうし、今日は帰りますかね」
『うむ。その方が良かろう』
予期せぬ雨に雨宿りをする羽目になったが、それはそれで良い息抜きになった1日だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます