第138話 相談
冒険者ギルドに向かえばもうお昼を過ぎた頃だったので時間的にギルドの中にいる冒険者達の数は少ない。居るのは昼間からギルドに併設されている酒場でお酒を飲んでる人か、午前中に依頼を終わらせて報告に来てる冒険者ぐらいだ。
因みに私は今日1日は自分で決めたお休みの日だから朝から家でのんびりと黎明と過ごしていたのである。うん、ホワイト企業は大事大事。
受付カウンターにマリッサさんを見つけて駆け寄ると向こうも私に気がついたのか声をかけてくれた。
「リンちゃんこんにちは」
「こんにちは、マリッサさん!」
トコトコとマリッサさんの窓口まで行くと笑顔で挨拶をしてくれる。
.....はぁ~癒される.....
不思議とマリッサさんの笑顔には癒し効果があるんだよね。やっぱりその人柄が表情にも出ているんだろうか?
「リンちゃん今日はお休みの日よね?どうかしたの?」
「えーっと....実はギルドマスターに相談したい事があって....。ギルドマスターとは会えますか?」
アポ無しで来たけどそう言えば大丈夫なんだろうか?何だかんだでお世話になってるから気兼ねなく訪ねてしまったけど、本来ならミルトンの冒険者ギルドのトップに立ってる人なんだから目茶苦茶忙しい筈だ。何か本当のお兄ちゃんみたいに気軽に相手をしてくれるから気にしてなかったけど、本来なら言動には気を付けないといけないよね?
.....まぁ今更感あるけど.....
「あら、そうなのね?じゃあ少しだけ待っててくれるかしら?声を掛けて来るわね」
「はい。あ、忙しいようなら別に急ぎじゃないので今日じゃなくても大丈夫ですから」
「わかったわ。でもリンちゃんからの面会依頼なら大丈夫だと思うわよ」
クスッと笑ってマリッサさん2階へと上がって行くのと同時に冒険者らしき少年が2階から降りてくる。
「あら、ビリー君。今から依頼?」
「マリッサさん!はい、午後から出来そうな物を選ぼうと思って」
「そう。無理せずに頑張ってね」
「はい!あの.....マリッサさんは何故2階に?」
「ギルドマスターにお客様だから知らせに来たのよ」
「客.....?」
そう言って階段の下に居る私と視線が合うといきなりその視線が険しくなり睨んでくる。
え?何よ急に....初対面だよね?
それぐらいの睨みに怯むことは一切ないが、理由が解らず不思議に思う。
「.....わざわざ忙しいギルドマスターが会う必要のある奴じゃないんじゃないですか?」
「あらあら」
んん??
マリッサさんが楽しそうに私とその少年を見比べる。
「リンちゃんはギルドマスターの特別だから自分に用事があって来たらすぐ連絡するように言われてるのよ?ふふふ」
「なっ!?!」
ギリッとまるで親の敵のような視線を益々私に送ってくるビリー少年と楽しそうなマリッサさんの表情を見てようやく事態を把握した。
.....マリッサさん、煽るの止めて欲しいです....
これはあれだな。ビリー少年はつまりギルドマスターの追っかけみたいなものなのか。で、ギルドマスターに構われてる私を嫌ってるって言うか、勝手にライバル視してる訳か....いや、えらい迷惑なんですけど??
「.....はぁ.....マリッサさん?」
「ふふふ。ごめんなさいね、リンちゃん」
「いえ....まぁ。後で理由は聞かせて下さいね?」
「勿論よ」
何か理由はあるんだろうけど、出来れば先に話して欲しいです....。
「じゃあ頑張ってねビリー君」
「は、はい!」
マリッサさんの姿がギルドマスターの部屋に入るのを見届けてからビリー少年は階段を降りてきて再度私を睨み付けてから依頼ボードの方へと歩いて行った。
「.....はぁ~……一難去ってまた一難かな?」
余り当たって欲しくない予感は大抵現実となってやってくるのだと身をもって実感するのだった。
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