第137話 新しいこと
王都で起こったスタンピードから早数ヶ月。心配していた王公貴族達に私の存在がバレるかも...?的な事もなく、平々凡々な毎日を過ごしている。
うん、私ってば凄く異世界生活を満喫してるよね!目指せ今後もスローライフ!
でもそろそろ目新しい事もしてみたいなぁと最近は思うようになってる。いや、毎日冒険者ギルドに行って薬草採取の依頼を受けたり、魔獣の討伐依頼を受けたりするのも安定した生活を営む為の生活費を稼ぐ上では必要なんだけど、それだけだとマンネリ化してるようで刺激が足りないと言うか、何か目標が欲しいと言うか....。
「ただ何かしようとしたら騒ぎになった時に面倒臭いと言うか.....」
例えば錬金術を活用して今より性能の良いポーション類を製作したとしよう。性能の良い物が出来ればそれだけ怪我を心配する冒険者が減る訳だから冒険者の中で噂になるだろう。それが要塞都市ミルトンだけで活動している冒険者の中だけで噂になるなら問題ないが基本的には冒険者は活動拠点を移動する者が多い。もしミルトンから果ては王都までそのポーション類の噂が飛び火した日には今回のスタンピードで私の存在を隠して貰った意味がないと思う。
「ん~……難しいなぁ。何ならやっても目立たないんだろ?喫茶店とかなら目立たないかなぁ?」
ただこの世界には所謂甘味が少ない。下手に喫茶店やカフェで甘味系を出してしまうとヤバい気がするし.....。いやでも甘味はテイクアウトにして販売する訳でもないからそこまで騒ぎになる事はないかな?最悪商業ギルドにレシピだけ売ってしまえばどうとでもなりそうだしなぁ....。
『どうかしたのか?』
「黎明」
『さっきから何か考え込んでいるようだが?』
丁度お茶の時間だったので黎明と一緒に1階でどら焼きをお茶請けにぼーっと考え込んでたら、食べ終えた黎明がそんな私に気がついたようだ。
「う~ん.....何か新しい事に挑戦してみたいなって気持ちはあるんだけど、何かを始めようとしたら全部マイナス面が強調されちゃって....」
『....それで悩んでいたと?』
「悩む....って言うか、考え込んでただけ?正直私が何かを始めようとすると騒ぎになりそうな予感しかしなくて....」
『ああ.....まぁそうだろうなぁ....主はそんなに素性がバレたくないのか?』
根本的な質問を黎明はしてくる。
「そりゃあ....だってこの桁違いの能力が王族や貴族にバレたら拘束されて自由に活動出来なくなりそうじゃない?」
『.....まぁ確かにそれはそうだが....だがSランクを目指すならどのみち目立つ事になるのではないか?』
「.....まー、確かにそうなんだけどねぇ……」
このまま冒険者を続けてSランク冒険者を目指せば、まず認定式が王都のギルドで行われるし、国にも報告がされてしまう。結果的に王族や貴族には私と言う存在は認識されてしまうのだ。
でもその頃には私も自分ひとりで対処が出来る大人な年齢にはなってると思うし、最悪国を自由に行き来出来るのが冒険者でもある。
ようはネックになっているのは年齢だけなのである。
「流石に年齢だけはどうしようもないしね」
『ならばあのギルドマスターに相談してみてはどうだ?』
「え?ギルドマスターに?」
『そうだ。お前のやって見たい事を相談してみるといい。何がしらのアドバイスをくれるのではないか?』
うーん.....ギルドマスターに相談かぁ.....確かにそれも悪くないかも?ギルドにはマリッサさんも居るから親身に相談に乗ってくれるだろう。
「そうだね....じゃあ冒険者ギルドに行ってみようか」
善は急げと、私と黎明は冒険者ギルドに向かった。
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