第136話 閑話 カノープス・メトリア・2
" 賢者 "と言う肩書きは伊達ではないと実感するのはこう言う時だとつくづく思う。
「そうか!ではお主が王都に接近する魔獣の大群を結界で塞き止め、超広範囲殲滅魔術とやらで焼き尽くしたのだな!?術式を聞いただけで凄そうなのが想像出来るな。しかも結界で周囲に余計な被害を出さなかったと言うのも素晴らしいぞ!流石賢者殿だ!なぁ、宰相もそう思わぬか?」
「はい。誠に国王陛下の申される通りですな。聞くところによると、何やら10歳ぐらいの少女の冒険者もその場に居たと騎士団から聞こえてきましたがその者は?ここには居ないようですが?」
ああ、ウザいな。宰相は。
此方が業と隠している部分をつついて来ようとするのは流石と言って良いのか、地雷を踏む馬鹿と言うべきか....。微妙な線だな。
「その冒険者でしたらギルドマスターの弟子のような者で冒険者になりたての少女だとか。スタンピードは滅多に起こる現象ではないので今後の勉強の為に連れて来たそうで、ずっとギルドマスターが守りながら戦闘をしておりました。勿論私も一緒の場所におりましたので把握しております。しかしながらやはりまだまだ幼い少女ですから、スタンピードの魔獣の瘴気にあてられたようで体調を崩して休ませているとの事です。まぁ今回の報告会にいる必要もありませんので" 賢者"として私が許可を出しました」
これだけ言えば流石に無理やり連れてこいとは言わないだろう。言ったら人格を疑われるぞ?
「うむ。ならば仕方あるまい。その少女の冒険者も今回の事は勉強になったであろう。これから直精進し、高ランクの冒険者を目指して頑張って貰いたい」
国王陛下が宰相に代わりリンを労る言葉を伝えてくる。これでリンに対して良い目眩ましになっただろう。
「はい。本人にもギルドマスターを通じて国王陛下のお言葉をお伝え致します」
「うむ」
それから1時間程で全ての報告を終わらせ、謁見の間から退出した時には、流石の俺も内心で安堵した。
上手くリンの存在を国王陛下や宰相閣下に隠す事が出来た。これで当面は彼女の周囲が騒がしくなる事はないだろう。だが人の口に戸は立てられぬと言うのも事実で、宮廷魔導師団他、今回の討伐に参加していた者達には箝口令を出したが所詮は人の口。必ずどこかからリンの話が漏れる可能性は高いだろう。
「はぁ......まぁ仕方ないか」
けれど要塞都市ミルトンの冒険者ギルドでギルドマスターをしている昔からの友人であるシリウスと同じように、自分もきっとリンに手を差し伸べるだろう未来が見えるようだった。
「もしもの時には俺の弟子にするだけだしな」
その時は誰にも文句は言わせないし、口出しさせる気は毛頭ないのだから。
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