第130話 スタンピード・2

「俺と一緒に前線について貰いたい」


まさかのギルドマスターからの提案に私は黙り込む。いや、確かに何となくヤバい予感はしてたけどまさかダイレクトにそう言われるとは思ってなかったと言うか何と言うか.....


「えーっと.....それは他の冒険者の方達も納得してる事なんでしょうか.....?」


多分....多分なんだけど確実に私みたいな子供がSランク冒険者でもあるギルドマスターに指名サポートを頼まれたと聞かされたら批判が出るだろう。断言しても良い!それがわからないギルドマスターじゃないのにどうしてその選択をしたのか?


「納得はしないだろうな。だが実際に戦闘が始まれば納得せざるを得ないだろうとは思ってる」

「はい?」


じっと見下ろしてくるギルドマスターの視線は何もかもを見透かすような視線だ。....もしかして私が全力出してない事に気がついてたりするのかなぁ.....


『アイツはエルフはエルフでもハイエルフだからな。リンの持つ魔力量の膨大さに気がついている可能性は高いな』


耳元で黎明レイメイが囁いてくる。


.....え!?ギルドマスターってハイエルフなの!?うん。確かにそれならその可能性は有りそうな気がしてきたよ.....


「.....面倒事の予感しかしないんですけど....」

「面倒事になったら俺とヘンリーとカノープスが守ってやるよ」


ギルドマスターと辺境伯と賢者


後ろ楯にしたらヤバい最強かもしれないけど別の意味でヤバそうじゃない?


.....はぁーっ.....仕方ないか....緊急事態だもんね。スタンピードに巻き込まれて亡くなる王都の人達が出たら寝覚めが悪いしね


「.....手加減はしますからね?」


逆に手加減しないとそれこそ不味いだろう。今まで全力で魔法を使ったことはないが、全力を出してしまうと多分カノープスさん並みの魔法になりそうな予感しかしないのだ。宮廷魔導師団に取り込まれて国に縛り付けられるのだけは嫌だ。


....せっかく私のお城を購入したばかりなのになぁ....もしもの時は他国に行くしかないよね


「お前が怪我をしない程度には頼む。勿論俺がお前の所に魔獣が行く前に倒すよ」




それからギルドマスターが王都のギルドマスター達が練った詳しい作戦を教えてくれた。


まず王都には街を囲むようにそれなりの高さの城壁があり、門は東西南北の4ヵ所にある。スタンピードで溢れた魔獣が向かって来てるのは南の門の方角なので南門以外は閉じて出入りが出来ないように封鎖するとの事。


最前線に向かう冒険者と騎士団は門の外で魔獣と相対し、魔導師団は城壁の上から補助魔法と魔法攻撃をする。怪我人が出たら直ぐ様南門から城壁の中へと運び治癒魔法とポーションで癒すそうだ。


「.....まぁそう上手く行けば良いんだけどな。どんな事にもイレギュラーはあるから気は抜かない方が良いだろう」

「そうですね」



魔獣が王都にやってくるのは時間的に後半日ぐらいだそうだ。城壁の中と外では忙しく動き魔獣対策に奔走している人々が居て、私はそんな人達を遠目に眺めていたのだった。


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