第126話 ヒカリダケ採取・2

森の奥へと進んでいくにつれて人の姿も見えなくなってくる。


「流石にこの辺りまで来る人は少ないみたいね」


まぁそれはそうだろう。元々薬草採取依頼自体があまり冒険者に人気のない依頼だ。同じ採取系でも魔獣の素材に関係する採取依頼はそれなりに人気があるのだが、薬草関係の採取なのなると一気に受ける冒険者が減る。それは完全に報酬額の問題で、時間が掛かる割には報酬額が少ない薬草採取系は不人気なのだ。


私は薬草採取自体が好きなのと、生活に余裕があるので報酬額が少なくても薬草採取の依頼を受けるが、お金を稼ぎたい冒険者にとっては薬草採取の報酬額は割には合わないのだそうだ。


まぁこればっかりは仕方ないよね。


なので薬草採取系の依頼は主に私みたいに採取が好きな冒険者か、報酬額が少なくても危険度の少ない依頼を受けるが受けたい冒険者が率先して回しているのだ。


「でも薬草は病気になったら絶対に必要になるものだから誰かがやらなきゃ薬も作れないんだし」


やれる人がやればいいよね~??それに私も採取しかしない訳じゃないし。


『....他の冒険者の噂なら気にする必要はないと思うぞ?』

「うん、私もそう思う。でもさ、気にはしないけど腹立つでしょ?それが気にしてるって言われるのかもしれないけどさ」

『そんなものか?』


そう。実は冒険者の一部の人が私が薬草採取しかしていないのに冒険者ランクが上がるのが早すぎるって噂してる人が居るんだよね。失礼しちゃうよね。薬草採取以外もちゃんとしてるからランクが上がるんでしょ!!


「宮廷魔導師団のカノープスさん達の依頼で迷宮にも行ったし、護衛依頼もこなしたし、辺境伯様の依頼だって達成したよ!その成果じゃん!!」

『.....リンが薬草採取メインに活動してるからそう見られるんじゃないか?』

「いーや、あれは絶対嫉妬してるのよ!」

『嫉妬?』

「そうよ!ギルドマスターが私に頻繁に声を掛けて来てくれるから嫉妬してるのよ!男の嫉妬って本当~に醜いわよね!!」

『.....?何故そう思うんだ??』

「あら!だってギルドマスターってSランク冒険者って聞いたし今では冒険者ギルドを統轄するギルドマスターでしょ?聞いた話だと凄くファンが多いんだって!自分が相手にされないからって仲良くしてる私に嫉妬してるのよ」

『.....本気でそう思うのか?』

「冗談に決まってるでしょ!....まぁでも遠からずってトコじゃないかしらね?」


ギルドマスターの信望者が多いのは事実だし、私が贔屓されてるのも事実。嫉妬から私の悪口を言いたい人も多々居るだろう。


「それでも私は私に出来る事をするだけだし、今はヒカリダケを見つけるのが最優先順位よ」

『.....そうだな....ん?リン、あそこに何か光っている物があるぞ』

「え!どこどこ!!」


キョロキョロと黎明が示した場所らしき所に視線を向ければ、確かにほの暗くではあるが光る何かがあった。


「ほんとだ!ヒカリダケかなぁ!」


周囲を警戒しつつ、ゆっくりと光る方へ近づくと、それは間違いなくヒカリダケだった。初めて見るヒカリダケは、キノコ全体が光るのではなく傘の部分が仄かに発光しており大きさもそれ程大きくなく、日本で言うシメジのような感じだった。


「シメジ程密集してないけど、大きさは似てるかなぁ?」


念の為、手袋をしてヒカリダケを採取する。薬草図鑑にはヒカリダケの採取時の注意事項等は特になかったので素手で採取しても問題はないだろうが念の為である。


「....取り敢えずこれだけ採取すれば大丈夫かな」


群生地程まではいかないが、それなりの数のヒカリダケは採取出来たので依頼的には問題ないだろう。


『では戻るか?』

「うん、そうだね。戻って食事にしよっか」


森の奥では太陽の光もなかなか入らないので時間の感覚がわからなくなるが、体内時計的にはお昼は既に過ぎているだろう。


『私はくれーぷが食べたい』

「.....黎明は本当に甘いものが好きだよね」


まさか聖獣が甘党だと誰が予想しただろうか?

お肉類が食べられないのはわかるけどね。



それから私達は特に魔獣と遭遇すること無く森を抜け、街へと戻ったのだった。









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