第107話 馬車の中では・2
薬師の迷宮は全十五階層ある。1日にどれだけ進めるかで何回十五階層のボスにチャレンジ出来るかが決まってくる。
「俺は薬師の迷宮は冒険者時代にクリア済みなんだが他の奴らは入った事はないんだろう?」
ギルドマスターがカノープスさんはじめ、オリヴァーさん達を見渡すがどうやら誰も入った事はないらしい。まぁ騎士様なんだから迷宮なんて用事がなければ入らないよね。
「迷宮の地図と俺が記憶しているルートは殆ど同じようだかは迷宮の中で迷う事はないだろうな.....後は迷宮内に出る魔獣だが、この迷宮は中級クラスの迷宮に該当するからそれなりにレベルの高い魔獣が出るが全部が全部そうではないから比較的進みやすいとは思うんだが....」
「シリウス殿、どんな魔獣が出るのかお聞きしても?」
オリヴァーさんがそう聞けばギルドマスターはもう一枚紙を取り出し床に広げる。そこには魔獣らしき絵と、魔獣の名前が記載されているようだった。
へぇ~……こんな図鑑みたいな一枚絵があったんだ。でもこれ販売はしてないよね?ギルドでも売ってるの見たことないもん。
「これは薬師の迷宮内で出現する魔獣を大まかにだが書き記した絵図で販売はしていない物だ。冒険者ギルドに閲覧自由な資料室があるんだが、そこに置いてある物だ」
「一階層から十五階層まで、それぞれに出現する魔獣が書かれてますね....しかも絵付きとは分かりやすくて良いですね」
ハルクさん達も絵図に感心しては食い入るようにじっくりと見ている。
「各階層毎に何が出るかを覚えるのは大変だから大体このレベルの魔獣が出ると思ってて貰えたら良いと思うんだが.....それで良いだろう?カノープス」
「.....そうだな....この絵図を見る限り各階層の魔獣の出現率に法則性はなさそうだし、実際に迷宮内に入ってみないとわからないからな......」
「あの、カノープス殿は宮廷魔導師になる前は冒険者だったとお聞きした事があるんですが、薬師の迷宮に限らず迷宮自体に入った事はあるんでしょうか?」
気になっていたのか、ライネスさんがカノープスさんに伺うように視線を向けると同じ様にジェイクさんやハルクさんもカノープスさんを見た。
「そうだな。薬師の迷宮は入った事はないが、他の迷宮には入った事があるよ....えーっと、確かあれは石の迷宮だったかな?当時魔法研究に必要な資金が底をついてさぁ、手っ取り早くお金を稼ごうと石の迷宮に行ったんだよ。魔獣倒すのは面倒臭かったけど、宝石類取り放題だし、錬金術の素材も沢山手に入ったから資金稼ぎには当たり迷宮だったよなぁ」
魔獣を倒す事に対してただただ面倒臭いと言い切り、しみじみと言うカノープスさんに何とも言えない表情を向ける騎士団の皆に、お疲れ様ですと心の中で同情したのは絶対に言うまい......。
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