第101話 ダンジョンへ行こう!・1

その日、いきなり宮廷魔導師のカノープスさんが現れて私に言った。


「ダンジョンへ行こう」


と。



私がこの世界に来て半年が経った。季節は秋に近い気候で暑くもなく寒くもない、丁度心地の良い季節だ。ギルドで受けている採取依頼の薬草の種類も随分と変わり、今の時期に採れる薬草へと変わってきている。当然採取場所も変わるかと思ったのだが、どうやら季節によって生える薬草が違うようで今まで採取していた草原で普通に採取出来るとエリスやマークから聞いた。


異世界って本当に不思議だよね。


「リンちゃん、ギルドマスターが呼んでるから執務室に行ってくれるかしら?」


丁度採取を終わらせて冒険者ギルドへ戻った私にマリッサさんが近づいてきた。


「ギルドマスターがですか?」

「そう。あとお客様も居るわね」


何だかマリッサさんが意味深に笑ってる気がするんだけど....嫌な予感しかしないんですけど?


「....えっと.....このまま帰るのは....」

「ふふふ。勿論駄目に決まってるわよね!」

「....はい.....」


マリッサさんの笑顔が怖い....。


仕方なく採取依頼の完了報告の前にギルドマスターの執務室へと向かう。勝って知ったるなんとやらよね。


コンコンとドアを叩いて返事を待つ。


「どうぞ」

「失礼します、リンです」


一礼をしてから部屋の中へと入りドアを閉め、ギルドマスターの方へ身体を向けると、ソファには見知った顔がお茶を優雅に飲みながら座っていた。


「お疲れさん、リン。呼び出して悪かったな」

「いえ....それより何の用ですか?」


恐らく呼び出されたのはソファに座り私に手を振ってる人のせいだろう事が予想される。


「あー、リンはコイツの事を覚えてるよな?」


正面に座っているカノープスを示して確認してくる。流石にまだ忘れる程前回から期間が過ぎている訳ではないので覚えている。


「宮廷魔導師のカノープスさんですよね」

「そうだ.....実はコイツがな....」

「そこからは俺が説明しよう。リン、俺とダンジョンへ行ってみないか?」


ダンジョン?ダンジョンって確かラノベでは迷宮とも言われているあの階層になってて魔獣を倒すとアイテムがドロップして、隠し部屋や罠があったり、ボス部屋があると言うあのダンジョンの事だよね?


「ダンジョンってあのダンジョンですか?」

「君が言うのがどのダンジョンか知らないが、一応世間一般で言われているダンジョンだな」


ふむ。やっぱり私の認識で正しいのか。しかし...


「何故私が宮廷魔導師カノープス様と一緒にダンジョンに?」

「特に理由はないけど楽しそうかなって?」

「じゃあそう言う事で!」


くるっと回り部屋を出ようとすると慌てた声が聞こえてくる。


「冗談だって!是非君の貴重な薬草を必ず採取できる運を貸して欲しいんだ!」






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