第100話 閑話 元カレと元友人のその後

結婚を1ヶ月後に控えた婚約者に浮気がバレた。

浮気相手は鈴の友人だった女、小夜さやだ。


誘ってきたのは小夜の方からだった。「ずっと好きだったけど、鈴の彼氏だったから言えなかった、でも1ヶ月後に結婚式が迫ってきてどうしても諦められないの」と言って。


涙を流して俺をみる小夜に俺は良い気になった。


こんなにも俺を好きな女がいるんだと。


鈴とは仕事で知り合ってから意気投合し飲み友達から始まった。いつの間にかお互いに意識をし、付き合いだした。鈴は男勝りな性格な部分もあるが、優しく、仕事で疲れた時も人を良く見て労ってくれる。自然と結婚を意識してプロポーズをした。お互いの両親にも挨拶をして式場も決め、後は結婚式を待つだけになっていた。


俺が浮気をするまでは。


「これ、返すわ」


浮気現場でベッドに投げ捨てられた婚約指輪。


「す、鈴...!これは違うんだっ!!」

「2人でベッドの上で裸でいて何が違うの?」

「それは....小夜が俺を好きだったから思い出が欲しい....って!」

「だから抱いたの?それを世間では浮気と言うのよ....最低ね。2人共もう二度と私の前に顔を見せないでちょうだい.....さよなら」

「鈴!」


バタンと閉じられた扉。


それが鈴との最後の会話だった。


「ふふっ。これで貴方は私のモノね!この指輪、私が貰っても良いよね」

「何を....何を言ってる....それは鈴の....っ」

「あら?鈴と貴方はたった今結婚が破談になったじゃない。だから私が貴方と結婚してあげる」

「ふざけるな!!」

「ふざけてなんていないわよ」


ニッコリと笑って小夜は俺に抱きついてくる。


「貴方が鈴より私を選んだのよ?」




俺達は親や親族、友人達から距離を取られた。当然だろう。花嫁になる筈だった鈴の友人と関係を持ったのだから。小夜は鈴と共通の友人達から友人関係を切られた事で怒鳴り散らしていた。


当然だろう。俺達はそれだけの事を鈴にしたのだから。


それから数日後、鈴の死を聞かされた。

交通事故だったらしい。



「ふっ.....ううっ....あああっ!!」


どうして俺はあんな馬鹿な事をしたんだろう。


あんな事がなければ鈴は死ななかったかもしれない。


俺が殺したようなものだ。



結局小夜とは結婚をしなかった。

俺よりも金を持ってる奴を選んだ。


鈴から俺を奪った事で満足したんだろう。最初からその為だけに俺に近づいたのかもしれない。

そんな女だったんだ。


けれど一番馬鹿だったのは俺だ。


全て失くしてしまった。



友も、恋人も。










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