第92話 雪ノ下草・5

黎明レイメイに拉致られて連れていかれた山頂の聖域は、それはそれは一瞬言葉に出来ない程の光景だった。


....一面水晶の壁に天井ってマジで....??


どこに視線を向けてもキラキラと光る空間に、目がチカチカしそうになる。

けれど心配した空気は問題なくあり息も普通に出来るし、寒さも感じない。因みにここは洞窟の中で、一歩外に出ればどか雪だった。


「え~……ここの空調どうなってるの?聖域だから?聖域だからなの??」


異世界は本当に謎である。


『どうした主?』

「......異世界って本当になんでも有なんだなと実感しただけだから大丈夫」

『それは良かったな?』

「良くはないわよ。良くはないけど、そう言う物だと諦めただけよ」


異世界の非常識具合は考えるだけ無駄だと実感しただけ。その一言に尽きる。


『主も相当非常識だから釣り合いが取れて良いんじゃないのか?』

「......」


自分の非常識さは自覚してる。明らかにこの世界の人よりも過剰戦力だもの。だからこそ余り大っぴらには自分の能力をひけらかす事もしていない。ただ、自分が楽しむ為だけに使っている能力だ。この世界で生活する上で冒険者に必要な能力は使うよ当然!


『まぁそれよりもここがこの六花の霊峰の聖域の中心部にあたる我の寝床だ』

「これ全部水晶よね?キラキラし過ぎて逆に身体休まらなくない?あ、良く見たら色付きの水晶もある!」

『.....特に考えた事は無かったが....その石は浄化能力が高く聖域には必要な物らしいぞ?』

「らしい?黎明レイメイも詳しくは知らないんだ?」

『我がこの地を女神から任された時には既に存在し、この霊峰自体を浄化していたからな。だからこの場所には澱みも存在しない』

「.....女神様から」

『そうだな。だから詳しく知る存在は女神だけだろうな』


ま、確かに創造神であるメダ様が一から作った世界なんだからメダ様が一番知ってるわよね。


『この地を任されたばかりの頃は私もまだまだ産まれたばかりで弱かったので、この石の浄化能力が私を守ってくれていたんだ。聖獣は澱みに強くもあり弱くもあるからな』

「へぇ~。今は大丈夫なの?」

『勿論大丈夫だ。人の世に降りても全く問題ないな。だからこそ主とも契約を交わしたのだ』


エッヘン、とでも言いたそうに自慢気に言う黎明レイメイに苦笑する。こう言うところが長生きしても大人気ないのは本人の性格なのだろう。


個人的には嫌いじゃないかな。


それかれ私達は黎明レイメイの住み処を拠点に、山で薬草を採取したり、魔獣を狩ったりして数日間過ごした後、転移で要塞都市ミルトンから少し離れた街道沿いに出て、アリバイ作りを兼ねて歩いて街へと戻ったのだった。






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