第41話 メントスへ行こう・3
多目に作ったつもりだった夕食は全て平らげてしまい、後片付けも終わらせて今はゆっくりと食後のティータイムを楽しむ。
満天の星を眺めながらお茶を飲むって、なんて贅沢なんだろうなぁ......。日本で生きて居た頃では考えられないわ。
まぁ旅行に行くのが好きだったから旅行先でだけはゆっくりと贅沢な気分を味わってたけど。
もしかしてよく考えたら此方の世界に転生出来て逆に良かったんじゃないかと考えてしまう。あんな奴らの側に居たらある意味一生地獄だったに違いない。
創造神メダ様、ありがとうございます。
思わずそのまま拝んでしまいそうになるリンにギルドマスターが明日の予定を告げてくる。
「メントスまではここからあと半分ぐらいの距離だから、朝は今日と同じぐらいに出発すれば夕方までには着くだろう」
「はい。街に着いたらギルドマスターはどうするんですか?ギルドに顔を出すんですか?」
「.....そうだなぁ、面倒事は先に終わらせて置いた方が良いな。悪いが明日メントスに着いたらその足でギルドの視察に入るから助手は頼んだぞ」
ギルドマスターは何やら楽しそうにニヤニヤと私を見る。
えー......何で私が.....
「ちゃんと臨時のギルド職員として給金も払うから頼むよ、リン」
「......わかりました」
そこまで言われたら仕方ないだろう。その後にはホワイトバードの捕獲も手伝って貰うんだしね。
「じゃあ今日は俺が見張り番をするからお前はテントで休んでおけ。初めて馬に乗ったんだ、疲れただろ」
「え、結界石ありますよ?」
テントの周囲に結界を張っておけば誰も入っては来れないだろうから見張りは必要ないのでは?
「結界を張ってても万が一何かあった際に直ぐに動けるようにしておかないとな....まぁ俺が心配症なだけだからお前はしっかり休んでおけ、まだ子供なんだしな」
「むー……」
確かに身体はそうなんだけど、余り人に頼りすぎるのは嫌なんだよね......。
「何かあれば必ず起こしてやる」
「......本当ですよ?」
「ああ」
私は渋々頷いてテントの中へと潜り込んだ。中は大人1人がゆったりと足を伸ばせるぐらいには広くて、私が子供だから2人でも十分に休めるぐらいの広さは確保されるだろう。
無限収納から毛布を取り出して寝転がる。意識はしてなかったけど、確かにギルドマスターの言う通り身体は疲れて居たようで直ぐに目蓋が落ちていった。
目覚めれば既に明け方でまだ日は地平線からは登っておらず、うっすらと明るくなってきている。テントから這い出ればギルドマスターが私に気がついておはようと挨拶をしてきた。
「おはようございます......もしかして一晩中起きてたんですか?」
「まぁ、元々エルフは徹夜に強いんだ」
そんな話聞いたことないけど?
ジトッとギルドマスターを見ると苦笑を浮かべたので、これぐらいにしてあげた。どちらにしても一晩中起きて色んな事から私を守ってくれていたのだから。私が出来るのは美味しい朝ごはんを作る事だけ。
「じゃあ朝ごはんの準備しますね」
「お~、頼むよ」
朝ごはんはシンプルにご飯とお味噌汁にベーコンエッグだ。それだけでも野営中の朝ごはんとしてはあり得ないメニューだろう。案の条、ギルドマスターは大喜びであっと言う間に食べきったのでお茶でも飲んで私が食べ終わるのを待って貰った。
テントを畳んで出発する頃になると、乗合い馬車の乗客や、他の商人さん達も動き出したようで私達はそれを横目に先に馬を走らせた。
途中お昼ごはんの為に休憩を入れつつ、メントスに着いたのは日が暮れるより少し前だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます