第40話 メントスへ行こう・2

私達は他の人達から敢えて少し離れた位置で野営の準備を始める。街道沿いから少し離れた場所で大きな木が1本はえていてその下にテントを準備する。プレアはその間大人しく草を食べていた。


「もう少し人が纏まってた場所の方が良いんじゃないんですか?」

「いや、人が多いと逆に盗難の被害に遭うことがあるから俺は昔から避けているんだ」

「......盗難.....」

「ああ、夜中皆が寝静まった後にな」


どうやら見張りと称して客の荷物や商人の荷物からコッソリと盗む奴がいるらしい。


「それ完全にアウトじゃないですか」

「そうだな、だから俺は近寄らないな。盗むだけじゃなく盗んだ犯人にでもされたら堪らないからな」


わー……そんな事までしちゃうんだ.....


「.....私も注意します」

「その方が良いな。これから先、冒険者としてやっていくなら必要な知識だからな」


冒険者って奥が深いな。じゃなくて、ろくな奴いないんじゃないだろうか?ふとそう思ってしまっても仕方ないだろう。今までに出会った冒険者の殆どがヤバい人ばかりだったんだから。


「さてと、そろそろ食事にするか.....とは言っても野営時は携帯食メインだから味気ないけどなぁ」

「あ、夕食なら私が作りますよ?」

「作る?作ると言っても野営じゃ簡易スープぐらいしか.....って何だそれは?」

「簡易キッチンです」


簡易キッチンと言えば立派に聞こえるが、ようは無限収納にキッチン用品を入れてきただけだったりする。でも大容量のマジックバッグを持っていなければ冒険者は野営の為に態々キッチン用品自体を持ってくるなんて事はしない。だから皆、食事を我慢して簡単に済ませるのだろう。


けど私には無限収納があるから我慢なんてする必要なんてないもんね!


「お前は.....ああまぁいい.....それで何を作るんだ?俺も手伝うぞ」

「そうですか?ん~そうですねぇ.....取り敢えずスープと簡単に野菜炒めにしておきます。火を起こして貰っていいですか?」

「ああ」


ギルドマスターが渡した火の魔石の魔道具を使って火を起こしてる間に野菜を切っていく。この世界では火を起こすには火魔法か、火の魔石を使った魔道具でしか出来ない。私が直接火魔法を使っても良かったけどせっかくギルドマスターが手伝ってくれると言うので、ならばとお願いする事にした。


スープはきのこたっぷりの味噌風味、野菜炒めは醤油風の味付けにした。


どちらもあまりこの世界では調味料としての認知度が低いみたいで食堂では使用されてるのを見た事がなかったので調味料を扱ってるお店に行ったら倉庫の肥やしにされていたのを発見したのだ。


聞けば異国の調味料らしく、目新しかったので仕入れてみたが使い方もわからないし、全く売れなかったそうだ。なのでお願いして全部譲って貰った。これだけあれば当分は困らないだろう。


......まぁあくまで両方共"風"であって日本のとは少し味が違うんだけどね。


さくさくと手際よく作っていくと辺りに味噌風と醤油風の良い香りが.....。風で流れたのか遠くから此方を見てる人も居た.....が、当然あげないもんね!


「良い匂いだが嗅いだ事がない香りだな?」

「そうですね、メルトンでは使われてない調味料みたいなので」

「ほぅ......それは楽しみだな」


ギルドマスターも嬉しそうに鍋とフライパンを覗き込んでくる。子供か!?


野菜炒めを大皿に移し、スープをお椀に入れてから作り置きして無限収納に入れてる熱々炊き立てのご飯を取り出して渡してあげると不思議そうに見る。


「これは何だ?見た事がないが......」

「ご飯と言います。正確には白米って言いますけど.....もしかしたら此方では違う名前かもしれないですね。野菜炒めに凄く合いますよ!」


いただきます!と言ってご飯の上に野菜炒めをたっぷり乗せて一口食べる。


「ん~!美味しいっ」


そんな私を見て同じ様にご飯と野菜炒めを口に運んだギルドマスターはまるで雷に打たれたかのように一瞬動きを止め、直ぐ様無言で食べ始めた。


.....相当美味しかったんだろうなぁ……でもわかるな~、その気持ち!美味しい物を食べた時って無言になるよね!!


それから2人して無言で食べ続け、あっと言う間に全て平らげたのだった。



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