第38話 狩りに行こうぜ!

本格的に本気で狩りに行こうかと考え始め、丸1日ホワイトバードの事を調べてみた。


ホワイトバードの1番近い生息地域は要塞都市ミルトンから南の街道を2日程歩いた先にある小さな街メントスから次の街まで続く街道沿いにある巨大な森の中にある大きな湖だそう。ホワイトバードの羽根の採取依頼があるとミルトンの冒険者は大抵がその湖に向かうのだそうだ。


そしてホワイトバードはCランクの魔獣で、大きさは個体差はあるものの大体日本で言うダチョウくらいの大きさがある鳥で、普段は大人しく人間を襲ったりする事はないらしいが、自分達に敵意を向けてくる相手に対しては容赦がないそうだ。


羽根を狙ってくる冒険者達に対しては、落ちている羽根を拾う分には見逃してくれるそうだが襲ってまで羽根を奪おうとする相手には反撃するらしい。


まぁ自分の命がかかってたら反撃もするよね、と思う。


羽毛布団分の羽根だと到底落ちてる羽根だけでは足りないだろうから確実に戦闘になると思われる.....。


大きさからして1羽倒したら足りるだろうし風魔法使えば何とかなりそうじゃない?倒せさえすれば無限収納があるから持ち運びは問題ないしね。問題があるとすればメントスまでの行程かなぁ......。


メントスまでは乗合い馬車が定期的にミルトンから出ている。道中2日掛かってしまう上に途中に街が無い為に野宿となる。野宿は仕方ないとしても、全く知らない相手の人達と野宿と言うのがちょっと抵抗してしまう理由のひとつだ。


後は自分達で馬で駆けて行くか、冒険者を護衛に雇って同行して貰うか。でもそれって結局全く知らない冒険者だから乗合い馬車で野宿するのと変わらない気がする。


うーん......やっぱり乗合い馬車で行く方がお金も掛からないし、他の乗客とは適度に距離を取って寝る時には結界でも張れば良いかな......?


冒険者を護衛に雇えばそれなりの金額になってしまう。

メダ様から貰ったお金は万が一の時に出来るだけ残しておきたいし......。


「どうしたリン、そんなに考え込んで」

「ギルドマスター」


主に新人冒険者用に置かれている資料室でホワイトバードとメントスまでの道程を調べていたからか、私に気が付いたギルドマスターが声を掛けてきた。

ギルドマスターはあの事件があってから何気に私を気にしてくれてるみたいで、こうして自分の空いた時間に声を掛けてくれるようになったのだ。


まぁ流石に自分のギルド内で新人冒険者相手にあんな事件が起きたんじゃ、被害者を心配するのも無理は無いだろう。しかもそれが冒険者に成り立ての新人なんだし。


「実はメントスまで行こうと思ってるんですけど、乗合い馬車を使うか冒険者に護衛依頼を出して単独で行くか迷ってるんです」

「何しに行くんだ?」

「ホワイトバードの羽根が沢山欲しいので、いっそのこと自分で狩りに行こうかと」

「待て待て待て待て!何故そうなる!?」


はて?自分は何か可笑しな事を言っただろうか?必要なら自分で取りに行く。素晴らしく冒険者らしい考え方だと思うんだけどな?


「冒険者に護衛依頼を出すぐらいなら、ホワイトバードの羽根の採取依頼を出せば済むだろう!?」

「沢山欲しいんですよね」


布団にするなら普通の依頼で出されているような枚数ではとてもじゃないが足りない。


「......そんなに何に使うんだ?」

「羽毛布団を作りたいんです。ふわふわで凄く軽くて暖かいお布団なんですよ」

「......何!?そんなのがあるのか!?」

「はい、あるんです。その為にはホワイトバードの羽根が沢山必要なんですよ」


衝撃を受けたかのようにギルドマスターは何やらぶつぶつ言いながら考え込んでいる。そんな状態で数分経ったぐらいだろうか、ギルドマスターが顔を急に上げた。


「よし!俺が一緒に行こう」

「は?何言ってるんですか、ギルドマスター?」

「乗合い馬車は確かに便利だが、その分色んな奴が乗ってくる。中には悪さをする奴が居るなんて事もザラにあるから、子供1人で乗るにはリスクが有り過ぎる」


あー......やっぱりそんな奴が乗ってる事もあるんだ......


「冒険者に護衛依頼を出す案も良いとは思うが、この間あんな事件があったばかりだから知らない相手だとあまり信用出来ないだろう?」

「.....はい......」


流石ギルドマスターになるだけの事はあって、周囲をよく見てるんだなと納得する。


「その点俺ならお前も顔見知りだからまだマシだろう?ホワイトバードの狩りも手伝ってやろう」

「本当ですか?」

「ああ、その代わりに俺にもその羽毛布団?って奴を作ってくれ。勿論その分のお金はちゃんと払う」


まさかの羽毛布団の製作依頼。いや、確かに話を聞いてて凄い興味津々だなとは思ったけどね!


「でも......ギルドマスターがギルドを離れて問題はないんですか?」

「それは問題ない。ちょうどメントスのギルドに視察に行かないといけない時期だったしな、それと合わせて行けば大丈夫だ、どうだ、良いアイデアだろう?」


また良いタイミングで視察があったものだなぁ.....でも確かに知らない人と同行するよりも多少知っている人と同行した方が余程良いだろう。


「......そうですね、じゃあよろしくお願いします」

「ああ」


こうしてメントスにはギルドマスターの護衛付きで行く事になったのだった。







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