第35話 友達が出来ました

朝御飯を済ませて1階のギルドに降りると朝一の依頼ラッシュは既に終了していて、特に急いでいない数組の冒険者達がのんびりと依頼書の貼られたボードの前に居たり、受付で手続きをしている。


階段を降りた私を目敏く見つけたマリッサさんが慌てて駆け寄って来るのに軽くお辞儀をした。


「リンちゃん、もう大丈夫なの?」

「はい、半日以上熟睡したら完璧に直りました。寧ろ今までで1番元気ですね」


笑みを浮かべて答えれば、マリッサさんはようやく安心したかのようにホッと息をついた。それと同時に恐らく昨日の事件が冒険者達の話題に上ったのか、私の姿を見てギルドに居た冒険者達がざわめいた事に気が付いた。

まぁあれだけの騒動にもなれば噂されても仕方ないわよね。寧ろ噂にならない方がおかしい。


「そう......それなら良かったわ」

「ご心配お掛けしてすみません、昨日は色々とありがとうございました」

「リンちゃんのせいじゃないんだから謝らなくても良いのよ!」

「でも夕食を用意してくれてたんじゃないですか?私、眠ってて起きなかったので無駄になったんじゃ......」


新人の冒険者だと1食食べる分の稼ぎを作り出す事も大変なのに、食事を1食分無駄にしたんなら限りなく勿体ないのではないかと思う。


「ああ、それなら大丈夫よ。ギルドマスターが自分の夕食にしたから!ギルドマスターもいつもギルドの食堂で食べてるのよ」

「......そうなんですか?」

「ええ、だからリンちゃんが気にする必要はないのよ」


まぁ食事が無駄になってなかったのなら良いかな?


「それでリンちゃん今日はどうしたの?」

「はい、もう怪我も完全に治ってるのでいつものように薬草採取か、討伐依頼があれば受けようかと思って」

「え?大丈夫なの?」

「はい、大丈夫です。もう全然何ともないので」


疑うようなら患部を見せても良いけど小さい傷ひとつ残ってないから逆に本当に怪我したの?状態なんだよね


「......本来ならもう1日ぐらい休んでて欲しいところなんだけど......リンちゃんなら大丈夫かしら」


あまり良い顔をしないマリッサさんを説得し、いつもの草原に薬草採取に来た。


「......あ、そう言えば昨日倒したシーフウルフはどうなったんだろ?」


私が倒したんだから、本来なら私の討伐記録になるわよね?帰りにマリッサさんに確認しないとね。これでもしかしたら冒険者ランクあがるんじゃない?


「あ、あの!」

「ん?」


採取をしようとしゃがんでいたら、上から声が聞こえて仰ぎ見る。するとそこには冒険者スタイルの少年と少女が立っていた。


......何だか見たことある気がするけど......誰だっけ?


「昨日はシーフウルフから助けてくれてありがとう!」

「ありがとうございました」


2人が感謝の言葉と共に頭を下げてくる。ああ、確かに私の近くで薬草採取してる2人が居た居た!


「でも確かギルドに走って知らせに行ってくれた子だよね?それなら私の方こそお礼を言わないと」


そのお陰で早々に後始末が出来たんだし。


「そんなことありません。貴女がシーフウルフを1人で引き付けてくれてたから行けたんです。本当にありがとうございました」


うん、これこのままだと堂々巡りの言い合いになるパターンだよね!仕方ない受け入れよう。


「うん、皆助かって良かったね。良かったら名前聞いても良い?私と同じ新人の冒険者さんよね?」

「僕はマークで、彼女がエリス。幼馴染みで、2週間程前に一緒に冒険者登録をしたばかりなんだ」


ほ~幼馴染みとは。これはあれだな、幼馴染みからいずれ恋人になるパターンだよね。


「毎日別の場所で薬草採取をしてたんだけど、昨日はたまたまこっちに来たの。採取したい薬草がこっちの草原に生えてるの」


.....それでたまたまタイミングが重なって巻き込まれたのね......運が良いんだか悪いんだか......


それから私達は暫く会話をしながらそれぞれ薬草採取をし、友達になったのだった。





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