第33話 閑話:紅き疾風

「問題を起こさなければ良いだけの話だ。いい加減お前達は自分達の立場を理解しろ......。女にチヤホヤされたいだけならミルトンを出て王都へ行けば良い。......どうするかはお前達次第だ」



そうギルドマスターから最後通知を受けたのは昨日の事だ。最初は何時ものような単なる小言だと思い、俺達は皆何気なく聞き流していただけだった。けれど話の途中から段々と厳しさが増し、最終的にそう告げられた時には頭の中にガンガンと警鐘が鳴り響きこれは不味いと本気で思った。


ギルドマスターがその場から居なくなっても、他のメンバーの奴らもきっと自分と同じ事を考えているのか誰も言葉を発しなかった。いや、出来なかったんだろう。


俺達は4人とも所謂幼馴染みで小さい頃から、いつか俺達でパーティを組んでAランク冒険者になろうと夢を語り合っていた仲だった。そしてBランクパーティにまでようやく登り詰めた。このまま順当に行けばAランクパーティも夢ではないと思ったいた。


けれどパーティランクが上がれば上がる程、周囲からチヤホヤされ、女性からもモテるようになった。元々俺達4人は自分で言うのもなんだが見目も良く背も高くスタイルも悪くない。それで高ランク冒険者とくればモテない筈がなかったのだ。有頂天になった俺達は取り巻きを引き連れ遊び、また依頼を受けては、街へ帰ったらまた取り巻きを引き連れて出歩く行為を繰り返し、俺達の名前を盾に取り巻きの女達が増長し、何をしていたのかを放置していた。他の冒険者からの称賛の声と同時に苦情も相まってその都度ギルドからは再三に渡り注意を受けていたが、俺達がその行動を改めることはしなかった。


今思えば、俺達はどうしてあんなにも天狗になっていたのだろうかと思わずにはいられない。他人から信用されるには時間が掛かるが、信用を失うのはすぐだと言うことを嫌という程知っていた筈だったのに。


「もう1度初心に戻って真面目にやり直そう」


それが俺達4人全員の気持ちだった。


それから俺達は夜遊びをやめ、女遊びをやめ、真面目に依頼をこなしていった。取り巻きの女達はそんな俺達に纏わりついていたが全て無視していた。そんな時、贔屓にしてくれていた商会から護衛の依頼が指名依頼として入ったので往復で1週間の護衛任務を真面目にこなし、ミルトンへと戻った。


そしてギルドマスターから聞かされたリンと言う新人冒険者への俺達の取り巻きが行った襲撃事件。


「俺が......その子に声を掛けたから.....か?」

「.....犯人の女がその時リンに暴力を振るおうとしていた女であるのは確かだが、今回の事件にお前達は関わっていないんだろう?それともまさかお前達が指示したのか?」

「そんな事をする訳がない!!」

「......なら良い。あれからお前達が心を入れ替えて真面目に依頼をこなしているのは知っている。だがお前達が女達に何の説明もなく自分勝手に放置したのは悪手だったな......王都のギルドマスター達との話し合い次第では、元々の原因を作ったお前達にも責任を問う声が出るかも知れない。それだけは覚悟しておけよ?」

「.....わかりました。それで、その子は大丈夫だったんでしょうか」

「......あー……まぁ怪我が直っていつも通り依頼を受けて頑張ってるよ」


何故かギルドマスターが言いづらそうにそれだけ告げた。


本来なら今すぐにでも直接謝りに行きたいが、あの女の子は俺達に会いたくはないかもしれない。


そして俺達が行けばまた迷惑を掛けてしまうかもしれないから。結局俺達は俺達の事しか考えられていなかった。何も変わってなんかいなかったのだ。俺達がまずやらなければいけないのは、これ以上取り巻きだった女達が好き勝手にしないように話をして納得して貰う事だけだ。



けれどいつか、直接謝罪出来る機会があれば、と俺達は思わずには居られなかった......。








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