第5話 異世界マニュアル

目を開ければ一瞬自分がどこにいるのかわからなかった。


ぼーっとしばらく天井を見上げていれば意識が段々とはっきりとしてくるのは日本で生活をしていた時と同じで。


そしてそんな"同じ"行動をしている自分に安堵する。


ああ、"私" は間違いなくここに存在するのだと。


不安が無いわけではない。


この世界は私の知らない未知なる世界。


魔法と冒険の世界


いくら本で知識を得たとしても、それはあくまでも知識でしかないのだから。


こればっかりは、自分の身体で経験していくしかないのだから。


「......よし!」


のっそりとテントから這い出ると、そこには昨日と変わらず穏やかな森の中。特に昨日とは何ら変わった事もないようだ。念のためにと無限収納に入っていた結界石を使って防御はしていたけど。勿論、使い方までご丁寧に添えられていた。


テントの側にある切り株に座り、無限収納からパンとハムを取り出して朝ごはんにする。調理器具があればしっかりと作りたい処だが流石に入ってなかったのだ。

おそらく地球の簡易コンロはこの世界には流石に不都合があるのだろう。


異世界なら定番の魔石コンロあたりかな?

街に行ったら是非とも手に入れたい一品だよね。


昨夜マニュアル本を熟読した。


これから向かう先はグレイス王国の東の国境に近い場所で要塞都市ミルトンと呼ばれる街。


街を治めているのはレグルス辺境伯一家。代々騎士団を率いてこの要塞都市を守ってきた由緒ある貴族家。

現在は夫婦と3人いる子供達とでこの地を守っているそうだ。戦闘能力は凄いが性格は温厚で領民にも慕われている御一家らしい。


「......ツッコミどころ満載なマニュアルよね」


隣国との国境に隣接している為、有事の際にはこの街が戦場の最前線となるので騎士団の駐屯地になっているそうだ。

なので街に入る為の審査が厳しいかと思っていたがそうでもないらしい。


いわゆる、国にとっては大事な場所ではあるが王都の貴族からは田舎貴族と揶揄されがちな場所でもある。つまり都会である王都からはあまり人が来たがらないらしい。なので常に人手不足も相まって犯罪者や、余程怪しい人でない限りは領内に入ることが出来るそうだ。


どうやって判別するのかと言うと、ラノベ展開によくある水晶玉だ。この世界でも水晶玉に手をかざして犯罪者かどうかを判別するらしい。


そして通貨は基本的に日本と同じような感覚だった。

この世界では全て硬貨。

金貨が100万円、大銀貨が10万円、銀貨が1万円、銅貨が1000円、鉄貨が100円になる。覚えやすくて凄く安心した。

金貨の上に大金貨、白金やらミスリルもあるそうだけど基本的に庶民が目にする機会はないとの事。


あるのは貴族や商人、そして高ランクの冒険者。


そう、あのラノベ愛好者が一度は憧れるだろう冒険者なのだ!





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