第17話 開発スタッフに会えるかも!?
「それは……」
どうだろう?
『ウィザードナイトストーリー』の話は小百合から何度も聞かされてるけど、それを作った人達については全然知らない。
確かに、そんな人達と会えたら、今まで知らなかった何かを掴めるかもしれない。
ただし、それができるかどうかは別問題だ。
「それって、本人に直接会わなきゃ詳しい話を聞くのは難しそうよね。ゲームの開発スタッフって、そう簡単に会えるものなの?」
「俺もゲームには詳しくないからよくわからん。だが、多分簡単にはいかないだろうな」
だよね。そんなことができるなら、小百合なんてとっくに直接会いに行って、自らの『ウィザードナイトストーリー』愛について延々と語りそう。
「一応小百合に、開発スタッフについて知ってることないか聞いてみるけど、あまり期待しないでね」
そこまで言ったところで、昼休み終了のチャイムが鳴る。
私と水間くんはここに来た時と同じように、誰にも見られないよう気をつけながら教室へと戻っていくのだった。
そうして午後の授業も終わって、その日の放課後。
いつものように小百合と一緒に帰って、ついでに『ウィザードナイトストーリー』の開発スタッフについても聞いてみよう。
そう思って小百合に声をかけたんだけど、なぜだか彼女は自分のスマホを食い入るように見ていて、私の声に気づかない。
「小百合! ねぇ、小百合ってば!」
「──えっ!? ああ、恵美。ごめんごめん、ちょっと夢中になってて気づかなかった」
何度目かの呼びかけで、ようやく私に気づいてくれた小百合。
彼女をこれだけ夢中にさせるのは何なのか。まあ、だいたいのことは予想がつく。
「また、何かの乙女ゲーム? 新作が発売されたとか?」
「乙女ゲームは乙女ゲームだけど、新作発表とはちょっと違うかな。今度の休みに、ゲームやアニメのイベントがあるんだけど、それの新情報が解禁されたの。『オトメンタル』も参加するんだよ!」
ハイテンションに語る小百合。
オトメンタルってのは小百合が贔屓にしている乙女ゲームブランドで、『ウィザードナイトストーリー』を販売したのもこの会社だ。
オトメンタルが小百合にとっていかに神ブランドかは十分すぎるほど知ってるから、そのイベントとなると、こうなるのも納得だ。
「『ウィザードナイトストーリー』のグッズ販売に、キャストやスタッフを混じえたトークショーもあるの。あぁ〜っ、今から楽しみーっ!」
私自身はゲームをプレイしたこともなければグッズにも興味ないから、いつもならよかったねと言って終わるところ。だけど、今回は事情が違った。
「ねえ。スタッフを混じえたトークショーって、『ウィザードナイトストーリー』を作った人達も来るってこと? それって、シナリオを書いた人も来るの?」
もしそうなら、なんという渡りに船だろう。興奮気味に聞いてみると、私がこんなにも食いつくのに驚いたのか、小百合が目を丸くする。
「えっと、どうだったっけかな? ちょっと調べてみるね。たけど恵美、いきなりどうしたの? 今までそんなこと聞いてきたこと無かったじゃない。もしかして、いよいよ『ウィザードナイトストーリー』に興味が出てきた?」
「えっと……まあ、興味が出てきたと言えば、出てきたかも」
興味を持った理由については、かな〜り特殊な事情があるけどね。
けどそんなことを知らない小百合は大喜び。すぐにスマホで情報を確認すると、ニコニコ笑いながら画面を私の方に突き出してきた。
「出る出る! シナリオ担当の人、
「本当!? そのイベントって、私も行くことってできるの?」
「もちろん。入場制限はないよ」
それじゃそこに行けば、その石才さんって人に会えるかもしれないんだ。
もちろん、トークショーってことは、直接会って話しをするのは難しいかもしれない。例えそれが叶ったとしても、人造魔物の出現なんて不思議な事態の謎は解けないかもしれない。
それでも、もしかしたらと期待せずにはいられなかった。
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