第21話 半年後
「火蜥蜴の舌と目玉か……」
掲示板に張ってある依頼の一つに、僕は目を止める。
火蜥蜴。
それは体長5メートル程の、巨大な蜥蜴の魔物だ。
パワーと瞬発力に優れ、更に火まで吹くため、魔物としてはかなり強い種類に分類されている。
「報酬は悪くない」
今僕は、とある都市のハンターギルドに立ち寄っていた。
ハンターギルドとは、魔物の素材なんかを買い取ってくれる組織だ。
それ以外にも、薬材の買取をしてくれたりもする。
ラノベで言う所の、冒険者ギルドに近い物だと思ってくれればいい。
ま、依頼を受けて護衛や討伐をするみたいな仕事はないけど。
あくまでも素材の買取専門のギルドで、そこが冒険者なんかとは違う所だね。
「よし、一狩り行くとしようか」
「はい!」
出現場所を頭に叩き込み、僕はギルドの出口へと向かう。
その後ろには、エリクシルが付いて来ていた。
……そんな僕達に、自然と周囲の視線が集まる。
何せ、美男美女。
しかもつい先日、討伐難度の高い魔物――
そりゃ俄然、注目の的になるという物。
お蔭で胸を張って歩くだけで『ピロリン』『ピロリン』と、イキリ達成のお知らせが届いて来る。
ひゃっはー!
最高だぜ!
「我が名はキョウヤ・イスルギ!この名をよく覚えておくがいい!」
テンション上がりまくりの僕は出口で振り返り、右腕を水平に伸ばしてそう力強く宣言する。
もちろん『ピロリン』祭りだ。
すると――
「あの、出来れば、そういうのはもう少し控えめで……」
エリクシルに小さく苦情を言われてしまった。
まあ多くの視線が集まる中のイキりだったし、恥ずかしかったのだろう。
彼女の恥ずかしがりは、未だに健在だ。
――あの小さな村を出てから、既に半年近くたつ。
薬草なんかを収集し、イキリポイントもエリクシルが恥ずかしさでパンクしない程度に集めつつ、僕達は旅を続けて来た。
そしてその過程で分かった事なのだが、どうやらIPの入手量は、一律ではない様だった。
困難な状況――重い雰囲気の中だったり、危機的な状況でイキる事で、より多くのポイントが手に入る様で、ゴブリン達との戦いで急にIPが50ポイントも増えたのは、その為である。
なので、それまで魔物を避けて来た僕達だったけど、理解して以降は積極的に魔物を狩る様にしていた。
ポイントをガンガン溜める為に。
まあ流石に、ゴブリンの時程の大量ポイントは得られないけどね。
あの時はチートを使い切っていた。
&、エリクシルを守る必要があったからこそだ。
流石にあれ程切迫した状況と比べると、単に魔物相手にイキるだけで得られるポイントは少ない。
それでも、戦闘毎に5ポイントとか貰えるので、貴重なポイント元である事には違いないけどね。
で……半年イキりを頑張った結果、トータル1000以上のポイントを僕は得ていた。
そのポイントを使い色々とスキルを取ったお陰で、今の僕は以前よりずっと強くなっている。
自分で言うのもなんだけど、時空チートを使わなくても、今の僕に勝てる人は早々いないんじゃないかと思っているよ。
そう!
剣が真面に扱えず、ゴブリン如きに焦っていた僕はもういない!
Newキョウヤ・イスルギ!
それが今の僕だ!
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