第14話 打ち明け
「我が名はキョウヤ・イスルギ。世界を放浪する大天才だ。俺と出会ったその僥倖を、神に感謝するといい!!」
「我が名はキョウヤ・イスルギ。世界を放浪する大天才だ。俺と出会ったその僥倖を、神に感謝するといい!!」
「我が名はキョウヤ・イスルギ。世界を放浪する大天才だ。俺と出会ったその僥倖を、神に感謝するといい!!」
「我が名はキョウヤ・イスルギ。世界を放浪する大天才だ。俺と出会ったその僥倖を、神に感謝するといい!!」
村に入った俺は、目につく村人全員にイキリ散らか《じこしょうかい》していく。
その度に『ピロリン』と音が響いて、イキリポイントが溜まっていった。
豚さん貯金箱に、小銭を連投してる気分である。
え?
目立つのは不味いんじゃないかだって?
それなら問題ない。
俺は上でが両方生えてるし、エリクシルの耳も尖っていない――様に見える。
よって影でこそこそする必要はもうないのだ。
「ふ……あったまって来たな」
テンション爆上げ中。
前世ではできなかった偉業に、感無量である。
さあ、次の
そう思って動こうとしたら――
「スメラギさん!あの、そのですね……」
エリクシルが急に声を上げた。
彼女は顔を赤く染め、恥ずかしそうにもじもじしている。
まさか恋愛イベントか!?
いや、流石にそれはないか。
エリクシルは凄くまじめな子だ。
尻がるチョロインでもあるまいし、そんなちょっとした事で恋愛脳にスイッチするフワフワした子ではない。
つまり――
「分かった。俺ばかりするのもあれだからな、次からはエリーがやってくれ」
そう、彼女もしたかったのだ。
‟イキリ”って奴を。
僕とした事が、配慮不足で一人で楽しんでしまっていた。
反省しないとな。
因みに、エリクシルの事を僕は『エリー』と呼んでいる。
渾名を付けたってよりは、名前から彼女の素性が万一バレるかもしれない事を避けるための、偽名と言った方が正しいだろう。
「い、いえそうじゃなくってですね。その……何と言うか……どうしてもそれってしなければならない事なんでしょうか?」
「それ?」
それが何を指すのか理解できず、僕は首を捻る。
「僥倖とか……そういう感じで、片っ端から挨拶して周る……事です」
エリクシルは、もじもじしながら申し訳なさそうにそういう。
あれ?
ひょっとして、僕の厨二イキリを恥ずかしがっているのだろうか?
「ひょっとして、恥ずかしかった?」
「その……ちょっと……」
……おかしいな。
森で収集しながら旅してる時に、僕はエリクシルに散々厨二っぽい姿を見せて来ている。
その際、彼女は特に気にした素振りを見せなかった。
だからてっきり、厨二イキリを気に入っている物だとばかり思っていたんだけど……
まさか勘違いだったとは。
「そうか……」
うーん、ちょっと困った。
エリクシルが恥ずかしがってるのに、イキリ活動を決行するのは心苦しい。
けど、僕にとってのイキリポイントは、エリクシルを守っていく上で、そしてどんな状況下でもイキるために必要不可欠な物だ。
まあGIPもあるけど、流石に取得条件の不安定なGIP頼りってもアレだしなぁ。
強力ではあるんだけど、如何せん使いっきりってのがネックだ。
この際エリクシルにチート能力を説明して、理解を得るべきだろうか?
実は彼女には、まだ僕の能力なんかは伝えていなかった。
何故か?
その方がミステリアスでカッコいいと思ったからだ。
うん、そんだけ。
だからまあ、別に話しても構わないんだよね。
とは言え……だ。
結局、話しても恥ずかしい事には変わりないんだよなぁ。
これから長い付き合いになる訳だし、余りエリクシルに我慢を強いるのは良くない。
それが元で嫌われたらいやだし。
……まあ仕方ないか。
「わかった。誰彼構わず挨拶するのは、出来る限り控えめにするよ」
姿を変化させてるので取り急ぎの危機はもうないだろうし、緊急時用のGIPも2ポイントある。
時空スキルだってあるし、危機的状況は余程の事がない限り何とでもなるだろう。
強化が遅れればそれだけ大々的なイキリが先送りになっちゃうけど、まあそこはエリクシルとの良好な関係の為に我慢だ。
「すいません。何だか我がまま言ってしまって……」
「気にしなくていいさ。ただ、事情があって完全には0に出来ない。悪いけどそこは理解してくれ」
「事情……ですか?」
「ああ、説明するよ」
僕は自分が異世界からの転生者である事。
そしてイキリポイントの事について説明する。
「異世界の方で、しかもそんな凄い能力が神様から授けられてるなんて……イスルギさんって凄い方だったんですね」
異世界から来た転生者でチート持ち。
普通なら、何言ってんだこの馬鹿はって反応が返って来てもおかしくはないだろう。
だが僕の言葉を素直に信じてくれたエリクシルは、驚きの表情で両手を口元にあてる。
ここだ!
僕はチャンスとばかりに叩き込む。
何を?
もちろんイキリをだ!
「ああ、俺は神に選ばれし覇者。悪いがエリー、君には俺の覇道に付き合って貰う事になる。覚悟しておいてくれ」
会心のイキリだ。
格好よすぎて、エリクシルの中のぼくの株は確実に急上昇した事だろう。
その時『ピロリロリン』と音が響く。
イキリ交換システムのパネルを確認すると――
『【薄幸なハイエルフの少女を守り抜け】クエスト・進行イベント【秘密の打ち明け1】達成』
――と、出ていた。
G・イキリポイントゲットだ。
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