第13話 村
「完全に普通の耳に見えますね!」
小川を覗き込んだエリクシルが、自分の耳の変化に感嘆の声を上げる。
「これでエリクシルがエルフとバレる事はない筈だ。まあ触られればバレるかもしれないが、そんな事はそうそうないだろう」
エリクシルの耳が変化したのは、50ポイントで獲得した変身魔法・
見た目だけが変化しているだけなので触られるとバレる可能性があるのが、まあ耳なんて早々他人に触られる事なんてないので、大丈夫だろう。
何故魔法をかけたのか?
理由は至って単純。
これから人のいる所に行くからだ。
人前に出るにあたって、もちろん僕にも魔法はかけてある。
隻腕だと目立ってしまうからね。
他人には、僕の左手が普通に生えているように見えている筈だ。
もちろんただの幻覚なので、人に聞かれたら左手は動かない設定で行こうと思っている。
これから向かうのは小川沿いにある、街と言うより村と言った方がいい規模の場所だ。
周囲には柵が施されており、入り口には、兵士と言うには貧相極まりないおっさんが二人立っているだけだった。
「バレないって分かってても、なんだか少し緊張します」
村の手前まで来ると、エリクシルが緊張した面持ちになる。
まあバレたら、大変な事になる訳だからね。
その気持ちは分かる。
けど――
「そんな顔してたら、変な風に思われる。俺の魔法は完璧だ。安心して胸を張れ」
まあ胸は、最初っからパンパンに張ってる訳だけど……
ちょっとおっさん臭い事を考えてしまったな。
まあ前世と合わせたらもう30な訳だし、多少は仕方ないよね。
「そ、そうですね。すいません」
「謝らなくていいさ」
「硬くならない様に、頑張ります」
エリクシルはなるべく平静を装おうとしている様だが、どうしても不自然さがその表情に残る。
まあでもこの程度なら、周りはたいして気にしないだろう。
「お前さんら、何処から来たんだ?」
入り口を通り抜け様としたら、兵士のおっさんに声を掛けられた。
それに対して、僕は事前に用意した
「我が名はキョウヤ・イスルギ。世界を放浪する大天才だ。いずれ天下に名を五轟かせる俺に興味があるのは分るが、好奇心による詮索や止めて貰おうか」
『ピロリン』とイキリ音が響く。
我ながら完璧だ。
「そうか……まああれだ。村で面倒は起こさない様に」
危ない奴。
そう判断されたのだろう。
おっさんが少し引いた顔で、俺をスルーしようとする。
村を守る門兵がそれでいいのか?
そんな風に思わなくもないが、まあ武器も持ってないから――インベントリに入れている――問題ないと思ったのだろう。
「いいだろう。俺の名をよく覚えておくといい。何故なら……いずれこの出会いを誇りと思う日が来るだろうからな」
『ピロリン』
ああ、気持ちいい。
前世では絶対できなかったであろう、厨二間爆発のカッコイイ決め台詞。
このために転生したと言っても過言じゃない。
「あ、ああ……」
あっけに取られているおっさん達を後に、俺はエリクシルを連れて村の中に入った。
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