第15話 神に感謝
「あの、イスルギさんがそんなに凄い方なんでしたら……私なんかが傍にいるのは、邪魔になるってしまうんじゃないでしょうか?」
エリクシルが不安気にそう口にする。
格好つけるために覇道とか大風呂敷を広げたのだが、盛り過ぎて彼女が気後れしてしまった様だ。
「ああいや、今のも只のイキリだ。余り本気で受け取らないでくれ。実際は覇道なんて微塵もない」
「あ……そうだったんですね。ごめんなさい」
……なんか、イキった後にそれを自分で説明するのってすっごい恥ずかしいな。
「まあ取りあえず、集めた薬草を売るとしよう」
僕は近くにいたほっかむりのおばさんに声をかける。
イキリは無しで普通に。
「薬草を売りたいんだが、買取しているような場所を教えて欲しい」
「それなら、そこの角を曲がって行った先に看板が出てるよ。にしてもあんたら……」
おばさんが途中で言葉を途切らせ、僕とエリクシルの事をマジマジと眺めて来る。
「な……なにか?」
まさか幻変身の魔法が見抜かれたとか?
いや、そんな訳ないよな。
「いやぁ、随分と美男美女のカップルだねぇ。こんな村じゃ、あんたらみたいな美形には滅多にお目にかかれないよ。眼福眼福」
おばさんは両掌を顔の前で合わせ、拝む様なポーズになる。
どうやら、単に僕達の顔に見とれていただけだった様だ。
「ふ、カップルではない。俺達は……
『ピロリン』と音が鳴る。
カップルとか言われて、気恥ずかしさから咄嗟にイキッた返しをしてしまった。
さっきイキリは抑え目にすると言ったばかりだが、元ボッチ陰キャゆえ致し方なしだ。
ちらっと振り返ってエリクシルを見ると、恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
まあ後で謝っておこう。
「案内、感謝する。行こう、エリー」
イキリにあっけに取られているおばさんに礼を言い。
僕は案内された場所へと向かう。
ああ、因みに僕はイケメンだ。
中性的な顔立ちをした、美青年って感じだ。
物語に出て来る、西洋の優しい感じの王子様みたいな顔だと思って貰えばいい。
え?
前世からそうだったのかだって?
そんな訳ないじゃん。
前世の僕は下とは言わないけど、中の下から中の中がいい所だ。
じゃあ幻変身の魔法で、顏を変えてるのか?
してないしてない。
単純に転生先のこの体が、美形だったってだけさ。
まさか転生してこんなに顔面偏差値が爆上がりするとは、僕もびっくりだよ。
今までその事に触れてなかったじゃないか?
だから後だし?
まあそう言ってくれるな。
転生してからは、僕は一度も鏡なんか見た事が無かったんだ。
ずっと牢屋だったしね。
街をうろついている時も、自分の顔なんて気にしてる余裕もなかった。
だから小川に映る姿を見るまで、自分がこんなイケメンだなんて夢にも思わなかったのさ。
しかしアレだ……
隻腕の美形剣士。
正に、イキるのにはピッタリの見た目だ。
きっと神様が、僕の為にこのシュチュエーションを用意してくれたんだろう。
神様ありがとうございます!
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