おっぱい三姉妹

かささぎの渡せる橋

おっぱい三姉妹

 昔々、あるところに三人の姉妹がおりました。


 あるとき、一番上の姉が森へ果物を取りに行こうとすると、老人が行き倒れていました。老人は「おお、そこの方。わしはとても腹が減っていて動けないのだ。何か分けてもらえないだろうか」と言いました。しかし、一番上の姉は食べ物を持っていませんでした。その代わり、一番上の姉のおっぱいには美味しい母乳が満ち溢れています。でも、一番上の姉は「この老人に私のおっぱいをあげるなんて嫌よ」と思って、「ごめんあそばせ、私も食べ物を持っておりませんの。我慢してくださいな」と答えて、そのまま行ってしまいました。

 しかし、森へ行ってみると木々には何故か果物のひとつも生っておらず、一番上の姉は何も取れずに帰ることになりました。


 この後、二番目の姉が川へ釣りに行こうとしました。すると、二番目の姉も一番上の姉と同じく、腹を空かせた老人に出会いました。そして、二番目の姉のおっぱいにも、栄養満点の母乳がたっぷり詰まっています。でも、二番目の姉もやっぱり「この老人に私のおっぱいをあげるのはちょっとね」と思って、「ごめんなさいね、私も食べ物を持っていませんの。その代わり、今から川に釣りに行ってくるので、帰りに釣れた魚をお分けしましょう」と答えて、行ってしまいした。

 しかし、川へ行ってみると水の中には何故か魚の一匹もおらず、二番目の姉も何も取れずに帰ることになりました。


 それで一番下の娘は、少しのお金を持って街に食べ物を買いに行くことになりました。すると、姉たちと同じく娘も同じように腹を空かせた老人に出会いました。そしてやっぱり娘のおっぱいは、栄養満点の美味しい母乳ではち切れんばかりになっています。娘は「食べ物はありませんが、私のおっぱいでよかったら、飲みますか」と答えました。それで娘が自分のおっぱいを取り出すと、老人は喜んでおっぱいにむしゃぶりつき、母乳を飲み始めました。一心不乱に飲むその様子は、まるでお腹を空かせていた子供のようでした。娘は、老人が自分のおっぱいにむしゃぶりつく様子を見て、「ああ、喜んでくれてよかった。おっぱいをたくさん飲んで、元気になってね」と思いました。やがて、老人のお腹もいっぱいになりました。すると老人は「ありがとう、お前は優しい心を持っているようだ。だから、お礼をしなくては。そこの野原に金色の花があるから、お前のおっぱいで育ててあげなさい。きっといいことがあるはずだよ」と言って、老人は娘と別れてどこかに行きました。


 娘は野原を探すと、老人の言う通り金色に光る何かの花がありました。娘がその花におっぱいをあげてみると、花はあっと言う間に果実をつけて大きく育ちました。果実を割ると、中には金色に光る種がいっぱい取れました。そこで娘は「まあ、これはきっとおっぱいで育つ、黄金の種をつける植物なのね。家に帰ったら、私のおっぱいで育てましょう」と、黄金の種を持ち帰り、家の庭で育てることにしました。


 朝、種を植えておっぱいをあげると、種はあっと言う間に芽を出しました。それで、昼に芽におっぱいをあげてみると、あっという間に芽は大きくなり、花を咲かせました。そして、夜に花におっぱいをあげてみると、花は果実をつけ、黄金の種をたくさん収穫出来ました。それで、娘の家は豊かになっていきました。


 しかしお姉さんたちは、「何ですのよ、ちょっと老人におっぱいをあげたぐらいで黄金の種を手に入れちゃって」と面白くありませんでした。でも、一番上の姉が「私のおっぱいの方が、いっぱい出て花を大きく育てられるはずですわよ」とたくさんおっぱいをあげても、種は全然芽を出しませんし、芽は全然花を咲かせませんし、花は全然果実をつけませんでした。そして二番目の姉が「私のおっぱいの方が、栄養満点で花を大きく育てられるはずですわよ」と丁寧におっぱいをあげても、やっぱり同じでした。お姉さんたちはますます腹を立てて、「いいわ、それならもっとすごいものを見つけて、妹に勝ってみせましょう」と言って、お腹を空かせている人におっぱいをあげようと出かけていきました。


 一番上の姉が森へ行こうとすると、男が行き倒れていました。男は「うーん、そこの方。私はとてもお腹が空いていて動けないのです。何か分けてくれないでしょうか」と言いました。そこでお姉さんは「あら、幸運な人ね。それなら私のおっぱいを飲みなさい。お腹いっぱいになるに違いないわ」と言っておっぱいを取り出しました。男は「えっ、おっぱいですか」と驚きましたが、お姉さんが「さあ、遠慮なくお飲みなさいな!」とおっぱいを突き出してきたので、男は仕方なくおっぱいにしゃぶりつき、母乳を飲み始めました。お姉さんは、男が自分のおっぱいにむしゃぶりつく様子を見て、「うふふ、これでこの人は何か恵んでくれるかしら」と思いました。すぐに、男のお腹もいっぱいになりました。すると男は「いやはや助かった。それに貴方のおっぱいは味が良く、飲んでも飲んでも飲み干せないほどたくさん出てくる。うむ、私は商人なのだが、いいことを思いついた。貴方のおっぱいを街で売りましょう。きっと売れること間違いなしだ」と言って、お姉さんを街に連れて行きました。


 男は道端に立つと、「おっぱい要りませんか、美味しいおっぱいですよ、今ならたくさん飲めますよ」と道行く人に声を掛け始め、何人かの人は立ち止まって、お姉さんのおっぱいを買いました。こうしてお姉さんは、自分のおっぱいをたくさんの人にしゃぶられ、母乳をいっぱい出しました。来る日も来る日も、お姉さんは街行く人におっぱいをあげつづけました。お姉さんは「考えてたのと違いますけれど、まあ、たくさんの人がおっぱいを買うから、少しはお金になるでしょう」と思いました。


 ところが、男は自分で儲けたお金の分け前をお姉さんに全然くれませんでした。お姉さんがいくら頑張っておっぱいを差し出して母乳を街の人たちに売っても、ちっとも見返りがありません。お姉さんはそれに腹を立てて、男に「ねえ、ちょっとは私のおっぱいで儲けた分を分けてくれませんこと」と言いました。しかし男は「えーっ、貴方は優しいから、ただでおっぱいを出してくれるものとばかり思っていましたよ。それに、貴方の食べ物や住まいは、私が工面しているじゃないですか。おっぱいで稼いだお金はそれに使っているので、十分だと思うんですけどねえ」と答えました。


 お姉さんはこれに驚き呆れて、「もういいですわ、だったら私一人でこの商売を続けさせてもらいます、ごきげんよう」と、男のもとを去って一人で母乳売りを続けようとしました。しかし、お姉さんは少しわがままだったので、気に入らないお客が来ると「あらごめんあそばせ、今日はおっぱいは売り切れですの」と嘘を言って追い返したり、おっぱいの吸い方が下手なお客につい「あらあら、もうちょっと上手に飲んでくださる?おっぱいは出ないし痛いし、不愉快ですわ」と言ってしまったりと、だんだん人気がなくなってしまいました。そのうちお姉さんのおっぱいは全然売れなくなってしまったため、お姉さんは「もう、おっぱい売りになんかなるんじゃありませんでしたわ。やっぱりおっぱいは、家族にあげるのが一番ですってよ」と言って、すごすごと元の家に帰っていきました。


 一方、二番目のお姉さんが川へ行こうとすると、女が行き倒れていました。女は「ああ、そこの方。私はとてもお腹が空いていて動けないのです。何か分けてくれないでしょうか」と言いました。そこでお姉さんは「あらら困りましたね、私は食べ物を持っていないのです。その代わり、栄養満点な私のおっぱいをお飲みなさいな」と言っておっぱいを取り出しました。女は「うーん、おっぱいはね」とためらいましたが、お姉さんが「何をおっしゃるの、今はこれしかないんですのよ」とおっぱいを勧めたので、女はおずおずとおっぱいにしゃぶりつき、母乳を飲み始めました。お姉さんは、女が自分のおっぱいにむしゃぶりつく様子を見て、「あはっ、これで上手くいったのかしら」と思いました。しばらくして、女のお腹もいっぱいになりました。すると女は「あらあら助かっちゃったわ。それに貴方のおっぱいは栄養満点で、なんだか前よりも元気が出るみたい。そうねえ、私は農民なんですが、いいことを思いつきました。貴方のおっぱいで作物を育ててみましょう。きっとすくすく育つこと間違いなしです」と言って、お姉さんを畑に連れて行きました。


 女はお姉さんに「この麦や玉ねぎ、キャベツ、豆、みんな私の大事な作物なの。全員におっぱいをあげて、育ててあげて」と言いました。お姉さんは「えーっ、こんなにたくさんの作物、おっぱいは足りるのかしら」とびっくりしましたが、女からお礼はたくさんすると言われたので、おっぱいを頑張って搾り、母乳をいっぱい出して作物たちに与えました。来る日も来る日も朝から晩まで、おっぱいで母乳を作っては作物に撒き、母乳を作っては作物に撒き、と過ごしました。お姉さんは「大変だけど見返りはもらえるから、なんとかおっぱいを出して、作物を育てないと」と思いました。


 ところが、作物が育つよりも前に、お姉さんの方が疲れきってしまいました。お姉さんがとても大変な思いをして毎日おっぱいをからっぽになるまで搾って母乳を作物にあげても、まだまだ時間がかかります。お姉さんはそれに苛立って、女に「ねえ、ここまで頑張っておっぱいをあげ続けているんだから、そろそろお礼をもらえませんこと」と言いました。しかし女は「そんな、作物が育ってお金になるのはまだまだずーっと先のことですよ。それに貴方のおっぱいのおかげで、今年はいつもよりも作物がすくすくと育っているんです。もっと頑張っておっぱいを出して欲しいのですが」と言いました。


 お姉さんはこれにがっかりして「残念ですわ、もう少し楽な畑を探しましょう」と、女のもとを去って色々な畑を巡って母乳を作物にあげようとしました。しかし、お姉さんは少し飽きっぽかったので、作物が実らないと分かると「ごめんなさい、貴方だけのおっぱいではないの」と言って畑を去ってしまうのが続いて、ちっともお礼がもらえませんでした。そのうちお姉さんはおっぱいを出し続けるのが嫌になってしまったため、「もう、おっぱいを無駄に出すなんて懲り懲りですわ。やっぱりおっぱいは、喜んでもらうために出すものですってよ」と言って、すごすごと元の家に帰っていきました。


 こうして元の家に帰ったお姉さんたちがあの黄金の種をつける植物におっぱいをあげてみると、なんと今までお姉さんたちのおっぱいでは育たなかった植物が、お姉さんのおっぱいから出る母乳を浴びてすくすく育つようになっているではありませんか。お姉さんたちは反省して優しくなり、妹と一緒に黄金の種におっぱいをあげながらのんびり暮らすことにしたのでした。


 めでたしめでたし。

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