第28話
「ボクを解き放て!ボクは将来、引きニート予定だぞ!」と友人に首根っこを掴まれながら宣言する。
声を上げるボクは見上げて友人を観るが、本人は顔をすら向けようとしない。昔、縁日の屋台で一緒に買った安物の時計で時間を計っている。
ボクはこの監獄から逃げ出そうとして、教室の入り口手前で捕まったのだ。
まるで先ほどの逃走劇は無かったかのように、席に連れ戻される。
「出来たのか?」
「……まだです」
とびきり冷静な声にボクは少しだけ傷ついて、机の上に広げられた教科書とノートに向き合った。試験勉強という名で、放課後教室で二人きり。
「あの、お家で……しませんか?」
「帰ったら、親御さんが甘やかすからな」
「えー、父と母は大変喜びます」
ボクの両親はこの鬼のような友人をいたく気に入っており、なんならボクよりも大事に扱う。
「そうだ、勉強の監視どころではなくなるからな」
「監視って、ボクは囚人じゃない!自由を!…無限大の自由を!…、心に枷はいらない!」
そのまま「うおぉおぉ」と叫びそうになるボクの頭を友人の手がガシリと掴む。
「こ、これはフォンエリック家伝統の……!?」
「それは顔面だろうが」
友人の手はボクの頭にジャストフィットしているのか、このまま少しでも力を入れられれば、どうにかなってしまいそうだ。
いかん、これは降伏しよう、無条件降伏だ。
「わかった、勉強はしよう、だから手を離せ。無条件降伏宣言、……話せば、話せばわかる」
「……問答無用と言えば?」
「えー、すいませんでした」
外には雪は降っていないことを確認して、ほっとする。
「生まれ変わったら百年後の高校生立った件について……、ラノベ爆誕!」
「今は、数学の勉強だが?」
頭から離れた友人の手が再びボクの頭の上に……?
「偉人現代転生、次回、犬養死す」
「今は、問6だ。さっさと解け。どうして毎回最後の問題が解けない?」
「気分だよ、気分」
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