第27話

「少しサ、その、……ソウダンがアるんダ」

 魔法使いは戸惑いながら、ボクに微笑みかける。

 妖艶な容姿、ただ幼さ残る声。声は夜に黒色に染み込んで、少し歪だ。

「サイキン、仲のイイ友達……、男がイるンだ」

 白金髪の魔法使いは、誰かを思い浮かべて別の笑みを浮かべる。それは幼く素直だ。

「ちょっと待ってくださいね」

 名探偵ボク登場。ははん、これは……おそらくボクの苦手な……恋がらみ。と、顎に人差し指と親指の間を添えながら、存在を薄くしようとする悪魔を探す。

 喋る犬の背中に乗り『無限の彼方に、さぁ!』とカーボーイの真似をしていた。可愛そうに、おそらく観たアニメが偽物だったのだ。

 などと関係ないことをつらつらと考えながら近づいて、油断する悪魔の頭を鷲掴みにする。

『をぉい、やめろ!やめろ離せ。……あ、あ、あ、力入れないで、イタイ……ゴメンナサイ……』

 片手にジャストフィットする頭に、ほんの少し力を入れると、大人しくなった悪魔。

『おぉ、魔法使い元気ぃ?』

 片手にぬいぐるみのような悪魔を持っていると腹話術師の気分を味わえる。ハァイ、エルモダヨ。

 「巻き込んだ当事者が、さも仕事が終わりました感を出していたのでつれてきました」と、断ってから、深呼吸。

「それで、その男の人がどうしたんですか?」

 魔法使いはボクの質問にきょとんとしている。

「え、……どう、ッテ?」

 これは、この人、この白金髪はもしかして、相当な重傷なのでは、と悪魔をみると視線を合わせようとしない。

「仲の良い友達がいる。うん、良い事じゃないですか」

「良イこと?でも、アイツが別のトモダチと話してイルと、気持ちがオち着かナイ。ヒトリ占めしたクナる、出来ないならコノ世界をコワしたくなる。……どうすればイイ?」

 『魔法使いは、魔王の資質があるからな、世界を敵と認識したら、堕ちる』と悪魔がボクに小さく耳打ちをしてきた。

 「世界の危機を気安く押し付けんじゃねぇよ、コアラ」という気持ちが、鷲掴みする手に伝わってしまう。『……イタイ』

 聞こえないふりをして、魔法使いに笑顔を向けた。

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