第26話
朝が辛い。
ボクは夜歩きが趣味なだけに、朝は弱いのだ。
布団にくるまり、寝ぼけた顔を最小限に出して奴に備えた。廊下に足音がゆっくりと近づいてくる。
敵機襲来の警告音が、ボクの脳内に響く。
両親が旅行に出かけるとのことで、この数日ボクの朝を脅かす奴。
奴が来る。
奴が。
ボクの部屋の扉が開く。
「おい、何故布団にくるまってる?」
友人は入るなり、頭を抱えた。失礼な、これはこの国伝統の暖の取り方だ。
「着替えると言って部屋には行ったと思うが?」
「着替えた!」
「その蓑虫だと確認できないが?」
「着替えてはいる、が、布団からは出たくない。繰り返す。着替えてはいる、が、布団からは出たくない」
ボクの言を聞いた友人は、無表情にボクの布団に手をかける。
「やめて、触らないで!ボクの布団に触らないで!この布団の中には、ボクちゃんがいるんです!お願いします、布団の中のボクちゃんだけには、手を出さないで!」
迫真迫るボクの演技、……抗議は虚しく、友人は淡々と引っ剥がそうとした。が、甘いな、今回の籠城戦に備えてくるまり方を研究したんだ!ボクが一番、布団に上手くくるまれるんだ!
「今、この布団は苦しんでいるんです!ボクが癒してあげないと、この布団がダメになってしまうんです」
「間違いなく、駄目になっているのはお前だろう」
「この布団には、ボクがいないと……」
「無機物に有機物と同じベクトルの想いを乗せるな」
偏見です!此奴、今、とんでもない差別発言をしましたよ!
言質はとった!犯人は此奴です。
ボクは友人に顰めっ面を披露した。
非難の声を上げようとも、変顔をしようとも、抵抗するボクは布団を引っ剥がされて、床にベチンという音をたてた。
「ご両親からお前の制御を任されているからな」
制御って、人を無機物みたいに言いやがって!
怒りがこみ上げてくる。友人とはいえ、さすがに限度というモノがある。
「帰りに、駅前の甘味処で好きなモノを奢ってやる」
「行こう、すぐ学校に行こう」
鞄を手にして玄関にダッシュだ。
「いや、朝食は食べていけ」
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