第24話
変身も出来なければ、敵を打ち倒す異能力もない。かといって、誰かを助けれる突飛した才能もボクにはない。ただ凡人かと問われれば、一般人的な普通要素はまるでない。
どっちつかず、つまりは蝙蝠なのだ。
と、帰り道にお肉屋さんで買ったコロッケを頬張りながら、友人に愚痴るとその顔は真顔のままだ。
こっちは深刻な話をしているのに、失礼な奴だなと思う。
「二律背反の相談を二律背反の行動をしながらするのは、ボケているのかネタなのかツッコミ待ちなのかどうかを考えていたよ」
もちろん相談内容は、所々ぼやかして話している。夜な夜な散歩に行っていると言えば、友人は面白いこれ幸いと言ってついてきてしまうだろう。
なるほど、食べるか喋るかをハッキリさせたいのか?
だがしかし、残念だったな、人間にはとりあえず口にモノを入れながら、伝えたい気持ちがあれば伝えることが出来るという能力を有している。ただし、受け取る側の問題があるなしは諸説。
「こっちは、もぐもぐ、真剣、もぐもぐ、相談してもぐもぐんだぞ、もぐもぐ」
このコロッケで最後だ、と口に放り込んで手にしていた油の染みた紙袋をぐしゃりとつぶした。
よし、これで話すことに集中できると友人の方をみると、目の前にコロッケがある。
そういえば友人も同じ個数を買っていた。
差し出されたモノを断るには、断腸の思いがいるので、そのままパクつく。
ウマイ。最高だ。
町内一美味いコロッケ屋さん……お肉屋さんだけある。
「で、なんの話だ?」
ん、そうだ、蝙蝠の話だ。
「蝙蝠に、もぐもぐ、なってもぐもぐ」
友人はいい感じのタイミングでコロッケを差し出してくる。
その日もボクは友人に愚痴を言い切ることはなかった。
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