第23話

 夜が日常を浸食している、と気がついてからというものボクの夜散歩についてくる奴が独り増えた。

 猫のような蝙蝠のようなコアラのような悪魔ではなく、ただの犬である。

 初めはあぁ野良犬か、と思っていた。

 が、野犬というのは徒党を組むのだ。が、一向に一匹でボクの歩く路をついてくる。仲間はいないようだ。

(をぉ、ぼっちという名の同志なのか?)

 振り返ると逃げていき、しばらくすると同じ距離をあけ、ついてくる。

 そんな犬を悪魔が確保し、ボクの前に連れてこられたとき、犬は尻尾を全力でふりながら、何とも言えない表情だった。

『こいつさぁ、お前と仲良くなりたいんだってさぁ』

 翼の生えた猫に掴まれた犬という状況を目の前にボクは何とも不思議な感覚になった。

「我が輩は犬である、名前はまだない」

 とボクが呟いた冗談に犬は、嬉しそうに一鳴き……。

「いえ、小生は犬塚戌左衛門ネコと申します」

 一鳴きはせずに、情報量が多めの自己紹介をしてきた。愛らしい犬の風貌とかけ離れた渋い声。

 コアラ似の猫の悪魔に掴まれた、ネコと名乗る犬、この状況はボクの予想の少し斜めをいく。私はしゃべるうまエド、みなさんにいいことをおしえましょう、頼むこの状況を解決してくれ。

「小生、生涯の主を捜しておりまして、はや五十有余。これぞと思う方々にお声掛けしましたところ、逃げ出す者が多く、あぁ数名化け物と殺傷されかけたこともありましたな。今回、アナタ様をお見かけしまして、是非とも我が主になっていただきたく思いまして」

『なんだコイツ。コロしていいか?』

 状況はさらに悪化した。ネコという名の犬はボクに主従を望み、コアラのネコ悪魔は犬をコロそうとする。犬と悪魔の口喧嘩が始まり、うなり声が重なり合う。

 なんだ、この混沌カオス

「待て」

 ボクの一声で二匹の声は止まる。

 所詮、畜生なのか。

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