第21話

『お前さぁ、どうすんの?』

 悪魔が心配そうにボクの前に回り込んで尋ねてきた。

「何が?」

『いや、将来だよ』

「悪魔が心配してくれるって、世も末だね」

 ボクはふざけて笑った。悪魔は笑わない。

『もうさ、こっちこねぇ?』

 悪魔の声色は真剣なままだ。

「まぁ、考えとくよ」

『いや、正直、この先、生きにくいと思う。間違いなく見えちまってるお前は、そっち側にいるけど、こっち側が混じってる。だから……』

「今日はやけにお節介だね」

 悪魔が黙った。

『いや、心配なんだよ。翼龍公も庇護するって言ってるしさぁ』

「年に四回くらいは戻ってこれる?」

『なにその、実家の近所に住む奴の発想みたいなノリ』

「えぇ、そうかな、実家近くに住んだら毎月帰るけどな」

『臑齧り過ぎじゃね?』

「尻にはかじり付いてないからいいじゃん」

『え?臑通り越して尻って事?齧りすぎじゃない?何、その発想怖い』

「そこまで齧るなら、オレ、オ前マルカジリでいいよね」

 悪魔は、『それはそれで怖い』と慄いている。

「ふつうに、大学行って、就職して、結婚して、家庭をもって、子供たちと孫たちに囲まれながら、老衰するのが夢だね」

『ドが付くくらい、普通じゃん。普通オブ普通じゃん』

「普通だよ。なぜか周りには不気味がられるし、友達と言える人間は少ないし、妄想とか口から発してないから少なくとも不思議ちゃんとは思われてないはずなんだけどなー」

『……お前、想像してたよりも、かわいそうな奴じゃん』

 悪魔がボクを哀れむ。そういえば、そんな歌あったっけ?

「人間を哀れむなんて、かわいそうな悪魔だねぇ」

『クビキコロすよ、ふん』

 可愛らしい悪魔の声が夜風に消えた。

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