第17話

 夜はいつも静かだ。

 夜は凪。と、最近散歩中に出会う一人が言っていた。

 くすんだ黒色のアスファルトと靴底が鳴る音が幽かにだけれど、確かにボクの耳に届く。

 鼓膜と足裏の、小さな刺激がボクの中に響いて、生きている実感が木の葉のように積み上がっていく。

 ボクだけの存在証明の仕方なんだ。

 学友やあの友人や大人たち、家族に認めていられようと、幾人かの学友たちや教師おとなに認められなかろうと、この夜道を踏む一歩はボクの中で小さくだけれど、重なっていく。

 竹林の道を抜け、卒業した小学校の横道、公民館の前を通って、神社に続く道を歩んで、神社に続く石階段を登らずに、田圃の畦道に折れ曲がり、大学の敷地横の道、住宅街の外周をすり抜ける。

 たまには別の路も、と考えるけれど風景を楽しみたいわけでもない、哀愁に浸りたいわけでもない、一歩との対話が重要だ。勿論、他のことも考えるし、漠然と歩む時もある。

 その一歩に気づける距離が、いつものコースというわけだ。

 アスファルトが大半の路も、砂利道、土、とある。足裏に感じる感触を感じようと、神経を研ぎ澄まそうとする。けれども、靴はボクの足裏を守るためのゴムで、それを否定するのだ。

 くすんだ黒色のアスファルトと靴底が鳴る音が幽かにだけれど、確かにボクの耳に届く。

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