第14話

 友人が落ち込んでいた。

 これは珍しいこともあるものだ、とボクはとりあえず横に座る。

 何も言わない。無言の時間が続くけれど、気まずくはない。

 間違いなく友人はボクよりも頭がいい、とびきり頭がいい。そんな友人が落ち込んでいるのだ、解決できなかったのか、対処できなかったのか、把握できなかったのか、判らないけれどボクの脳味噌では解決が出来ないことだろう。

 だから、励ましや慰めはいらない。というか、友人以上の答えや結果がボクに出せるとも思えない。ゆえ、この距離の中では言葉は不要、それはボクにすら判る。

 それに元々、友人はボクといるときは大体、本を読む。つまりは無言だ。

 いや、正確にはボクの独り言に友人が本を読む傍ら相槌を打つのだ。

 つまり、この二人の間の主導権はボクが握っているといっても過言。

 ……正直、いま何を話しかければいいかわからない。笑えばいいのか、泣けばいいのか、分からないから、ボクは無表情に友人の隣に座り続けた。石像だ、ガーゴイルだ、巨石だ、由来不明の巨石群遺跡になるんだ、ボク。

 「帰るか」と友人。

 「おう」とボク。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る