第12話
友人と昼飯を食べていると、悲しくなってくる。
友人はいつも携帯用固形食を口にするからだ。ボクが奮発してコンビニ弁当でも、学食で買ったサンドイッチでも、特製手作り弁当でも、だ。
「お腹すかない?」
「いや」
侮辱的な視線を送ると、友人は本を読む手を止めて不思議そうな顔をした。
「なんだ、食べたかったのか?」
「違う!」
ボクは激怒した。必ず、かの友人の食への無関心を除かなければならぬと決意した。携帯用固形食には罪はない、悪意も向かない。
この友人の中の食への無関心さが憎いのだ。
「いいかい、ボクには譲れないモノがある。一つは、睡眠時間で、もう一つは美味しい食べ物だ」
珍しくヒートアップしているボクをみて、友人は微笑んでいる。はぁ?なんだ、そのすかした態度は。
「人生で美味しくないモノを食べ続けたときと美味しいモノを食べ続けたときの幸福度の違いを考えてみたまえよ、君」
ボクは延々と一般統計データはないけれど“ボクの中統計”で説明を試みる。
「朝、美味しいモノを食べるとテンションがあがるだろう、昼にまた美味しいモノを食べると、さらにテンションが上がるだろう。で、夜にも……」
もうよく分からなかったが、後には引けない。
「それはバブル崩壊したら、さぞ大変そうだ」
茶化してきやがったコイツ。茶々入れましたよ。
「まぁ、だいたい熱量は分かったけど、何を食べるかじゃなくて、誰と食べるかじゃないか?」
「ぉぉう」
ボクは言葉を詰まらせた。
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