第10話

 玄関を開けると友人の顔。

「うむ出迎えご苦労」

 片手をあげ、感謝を述べると友人はボクの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「ちょ、やめ、おい」

 抵抗を試みるが、如何せん身長差という物理的な不利は覆せない。

「いくぞ」

 そんな言葉を残して友人は通学路を先往く。

「ちょまてよ」

 俳優のマネをしながら、追いかけた。こんなやりとりを毎朝している気がする。

 友人と二人、通学路を歩く。

「パンを咥えた美少女って、世の中に存在すると思う?」

 唐突なボクの質問に友人は顔色一つかえない。

「美少女は存在するが、パンは咥えない」

「咥えるくらいなら、堂々と遅刻するか休むよねー」

「いや、学校で食え」

「をぉ斬新」

「調理器具と材料持参」

「それこそフィクションじゃね?」

「水と米をセットした炊飯器を持った美少女はさすがにいないか……」

 和食バンザイ思考。

「いや出会い頭ぶつかったらワンチャン死ぬくね?」

「通学路ばったり出会ったら殺人事件か、なるほど斬新だ」

「でも犯人は美少女。許される……?」

「この国は法治国家だ、許されるか」

 学校が見えてきた。

 まだくだらない会話は続けれる。

 今日も歩調がゆっくりだ。

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