第7話
コアラの様な悪魔は今晩も暇なのだろう、いつの間にか、歩くボクの横を飛んでいた。
『お前、暇なの』
暇かと言われれば、たぶん暇だ。夜な夜なこうして、誰もない街を散歩しているのだ。
「どうだろう、暇なのかな」
『自分のこともわからなくなってるって、痴呆老人じゃん』
まだ十代だよと思いながら、ケケケと嗤うコアラの方を見る。ボクは小さく笑う。
少し早くなったり、ゆっくり歩いたりしながら、たわいのない話が続いた。三角形と円形のどちらが好きか、砂糖と塩を色で表すなら何色か。
散歩も終わり際、コアラがそわそわし始めた。
「なに、どうしたの?」
『そわそわなんかしてねぇよ。ちょっと相談したいことがあるけど、痴呆患ってる奴に言っても仕方ないだろ』
「悪魔も心配事があるんだね」
『僕のことじゃねぇよ』
「ふーん、言うだけ言ってみれば、楽になるかも」
ボクはポッケの中の両手を少し動かした。
『魔法使いが、元気ない』
「魔法使い?」
ボクは両手を前に構えて「メラ」とか「グラビデ」とか唱えてふざける。
『この機を逃さず、契約して魂をもらってもいいんだけどよ、それはナンカ違うじゃん』
ボクはおかしくなった。ただ大笑いなぞせず、真顔のまま。
「何も聞かずに、温泉でも行ってくれば?二人きりが恥ずかしいなら、他の友達誘って」
コアラがまじめな顔をして、『そうしてみる』と頷いて、魔法陣の中に消えていった。
「あ、そうやって帰ってたのね」
ボクの呟きは、夜の風にのって消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます