第6話

 ボクの世話は大変だろうと思う。

 などとまじめな顔をしながら、友人に話すと「ならしっかりしろ」と言われた。うん、仰るとおり。

 授業中。

 白墨で書かれた文字と磁石付きの紙を駆使して彩られた黒板を、どのようにノートに書き記すか、ソレが問題だ。アリストテレル、……アリストテレスの言葉通り、とぅーびー、おあ、のっととぅーびー、でぃす、いず、くえすちょん。あれ?ソクラテスだったかな、いや、マーロウ、べーこん、……お腹すいたな。

 無駄な思考に傾いていたが、教室に、ボクに緊張が走った。長々と説明をしていた教師が、「はい、じゃあこの問題分かる人」という破壊呪文を唱えやがった。

 焦ったボクは思わず友人の方を見る。

 友人は優秀で、黒板に書かれている問題も解けてしまうだろう。

 その様子をみると授業のノートを纏めつつ、黙々と参考書を解いていた。それはもう結構な速度で。

 天才か?やはり天才なのか?

 「誰もいないなら、今日の日付から計算して……」と教師は謎理論数式で、出席番号を割り出し始めた。小学の頃から思っていたけれど、なんなのだ、その謎計算式は。文科省推薦なのだろうか。

 いやいやそんなことより。まずい。おそらく謎計算式ではじき出される数字は、ボクの番号より前だけれども、残念なことに今日は一人休みだ。

 あ、これ、当たるかも。じゅっちゅぅはっく。

 オワタ。かいてもない汗が背中をつたうのがわかる。

 友人は此方を見ようともしていない。薄情者。

 あぁ、もうこうなったら問題を解かなくては、解かなくては。気は焦り、頭は働かない。

 ボクの順番が迫ってきていた。

 もう一度だけ、友人の方を見た。「────」口が分かりやすく動いている。

 ボクはソレを理解すると、教師の設問に答えた。

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