第3話
その夜も静かだった。
時計の針はてっぺんをすぎている。
静かに扉に鍵をして、夜の空気を肺に入れた。ボクの眼は薄く光った、勿論妄想だ。
ボクが夜な夜な出かけていることは、親はきっと気づいているし、三つ上の兄も気がついてるに違いない。
誰かに会う、何か目的があるわけではない。ただ夜道を歩きたくなるのだ。
理由はない。いや、格好つけたかったかもしれない。
ともかく誰かに迷惑をかけたいわけではない、何かを盗み見たいわけでも、盗みたいわけでもない。ただただ誰もいない街を、車も通らない道を、道の真ん中を歩きたいだけだ。
盗んだバイクで~、と口を閉じて鼻で小さく唱えなる。
いつもの道順は、家からでて、竹林の道を抜け、卒業した小学校の横道、公民館の前を通って、神社に続く道を歩んで、神社に続く石階段を登らずに、田圃の畦道に折れ曲がり、大学の敷地横の道、住宅街の外周をすり抜けて、家への道にもどる。
孤独で静かな時間だ。
ボクは闇に溶けるように、今晩の一歩目を踏み出した。
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