第20話
彼が職場にきてから一ヶ月驚いたことにまだ一回も計り間違いをしていない。
「もう本当に凄いとしか言えないわね」
食堂でその話題になり勝手に盛り上がる。
「そんな事ないですってまぐれですよ。まーぐーれ」
軽く笑う彼。
「田中君とは初めてあった気がしないんだよな・・・・・・なんでだろ」
まるで昔から自分の前にいて、今と同じように笑顔をくれていたような感覚、それはとても心地よいと素直に感じる。
「今日もお昼ご飯食べてないけど本当に大丈夫?」
「はい、あんまりお腹すかないんですよ」
「そう、それなら良いんだけど」
「あの、いきなりでわるいんですが・・・・・・」
「ん? どうしたの?」
「明日一日僕とデートしては貰えませんか?」
「え?」
本当は聞こえているのに思わず聞き返してしまう。
「僕とデートして貰えませんか」
「どっ、どうしたの急に!」
「嫌ですか?」
「嫌ではないよ。凄く嬉しいけど・・・・・・」
「僕の休みは明日が初めてで最後かもしれないんです、お願いします」
深々と頭を下げる彼に、私は。
「いいよ。どこに行こうか?」
頭を上げた彼の顔は嬉しそうに笑ってはいたけど、どこか寂しげな雰囲気を感じた。
「自分で誘っておいてあれなんですが、僕は今まで遠くに出かけたことがないのでどこに行ったらいいのかよくわからないんです」
「大丈夫、私が明日までに良いデートプラン考えておくわ」
「すいません。ありがとうございます」
「集合場所とかはどうする?」
「朝の十時ぐらいに二丁目の空き地でお願いしたいんですが大丈夫ですか?」
「大丈夫よ」
午後の作業開始五分前のチャイムが社員食堂に響く。
「じゃあ、明日楽しみにしています」
軽く手を振りながら立ち上がる彼にこちらも軽く手を振って答える。
明日彼とデート・・・・・・そう考えると自然に頬が上がるのがわかった。
何処に行こう。
お昼は何を食べよう。
何時まで大丈夫なのか聞くの忘れちゃった。
遅くまで大丈夫なら夕食も考えないといけないし。
洋服何着ていくか考えないといけないし。
「あーもう!」
私はテーブルに突っ伏し足をばたつかせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます