第14話
マジ、じいさんに本気出すとかありえないんですけど。
ワシはボロボロの体を引きずりながらやっとこさ家にたどり着いた。
あの若者め、今度会ったときこそ見ておれ・・・・・・
「あそこでわしの爆撃が当たっていれば勝敗は変わっていたのにのう・・・・・・」
それだけが未だに悔やまれる。
ともあれ、どうにか一命を取り留めた。
「今日はもう休もう・・・・・・」
技を使って全裸だったので体が寒い、もしかしたら帰りの道で風邪を引いてしまったかもしれない。
「ん?」
廊下を歩いていると不思議な光景が目に入った。
廊下の一部が持ち上がり、持ち上がった場所には下へと続く階段があるではないか。
「はて、ここの家に地下倉庫なんてあったかのう」
少し気になったので降りてみることにした。
周りに明かりが何もないので階段はとても暗く見えづらいのう。
「下に光が見えるわい」
耳を澄ませると人の声のようなものも聞こえる。
「もしや!」
奥さんの濡れ場かもしれん!
「わしのラッキースケベ!」
わしは多大なる期待を胸に階段を音を立てないように慎重に降りていった。
「・・・・・・なんと!」
階段の一番下に降りると目の前に見慣れた背中があった。
「・・・・・・ヘレン・・・・・・」
ヘレンは全裸で足下へ顔を向けて何かを話しているようだ。
わしは顔をヘレンの足下に向ける。
「あれは! この家のばあさん!」
一体何があったと言うんだ!
そこで、ヘレンに動きがあった。
右腕を大きく掲げ、左腕を腰に回す。
考えるよりも先に体が動いていた。
「へれええええええええええええええええええええええええええええええええええええんんんんんんんんんんんん!!」
およそ五メートルの距離を一気に駆けヘレンに殴りかかる。
わしの殺気に感づいたのかヘレンは紙一重でワシの一発を避け、体をワシに向けた。
「何でお前がここにいる!」
「うるさい! この老人虐待野郎! 全国の老人達を代表してわしが貴様を殺す!」
わしはすぐさまファイティングポーズをとり、ヘレンも同じくファイティングポーズをとる。
「・・・・・・この技は・・・・・・使いたくはなかったが・・・・・・」
わしは掲げた左手を自分の胸に当て、自分の衝撃波を心臓に当て始める。
「お前! 何をする気だ!」
「馬鹿たれ! よく見ておれ! これがわしの秘奥義じゃ! いやはあああああああああああああああああああああああああああ!!」
あの若者には使わなかったわしの最終技、まさかヘレンに使うことになるとは、何度も何度も心臓に衝撃を与える心臓が破裂しそうじゃが。
「まだじゃ! まだじゃああ!」
何度も衝撃波を打ち込むうちに、衝撃波と心臓の鼓動が徐々に重なり合う。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
体に目に見えて変化が起きてくる。
全身の筋肉が悲鳴を上げ、膨らみ始め、体を覆っている皮膚が張り裂けんばかりに肥大化する。
体が熱い、頭の奥底が焼け付きそうなほどの速度で回転している。
「あああああああああああああああ!」
思考なんてものは今は必要ない、目の前のヘレンを! ヘレンを!
「じじいインパクッ!!」
体を跳ね、ヘレンに殴りかかる。
「早いっ!」
回避行動に入る途中だったヘレンの体が後方に勢いよく飛ぶ。
「がっ!」
大型モニターに大の字に当たったヘレンの体が前方に倒れる前に、わしはヘレンの顎先を蹴り上げた。
ヘレンの体が天井近くまで浮き、上昇が終わり、一瞬空中に制止した瞬間に蹴り上げた直後に飛び跳ねたワシのかかと落としが腹部に突き刺さる。
「これで終わりじゃああああああああああああああああああああ!」
そのまま床に速度を上げながら落下する。
「じじぃ……フィジカルクラッシャあああああああああああああああああああああ!」
鈍い音が部屋に響き、その瞬間にヘレンの体は床にめり込んだ。
ワシは倒れているヘレンの横に立っている。
「はっ・・・・・・はっ・・・・・・」
頭の回路が焼け付いていくのがわかる。
「もう終わりが近い・・・・・・」
この回路が燃え尽きたらわしは・・・・・・
ヘレンはぴくりとも動かない。
「殺してしもうたか・・・・・・ヘレン・・・・・・ヘレン・・・・・・」
お前・・・・・・片言以外で話せたんじゃな・・・・・・若干ビックリしたわい・・・・・・
「うっ・・・・・・」
胃の奥から込み上げる物があり、反射的に口に手を伸ばす。
両手の平では収まらないほどの血がはき出された。
「ヘレン・・・・・・わしも・・・・・・そっちに・・・・・・」
力なく膝をつき、ヘレンの顎髭に触れる。
「昔と・・・・・・変わらないのう・・・・・・」
ゆっくりと体を横にしてヘレンと寄り添う。
「ヘレン・・・・・・わしな・・・・・・ずっとヘレンの事・・・・・・だいす・・・・・・」
体を起こし、横に並んでいる老いぼれ二人を眺める。
「ふんっ!」
部屋から出て階段を上がり始める。
「邪魔が入ったが全部計画通りさ! さぁ! パーティはこれからだよ!!」
階段を上り終えると、老婆は階段の入り口を勢いよく閉めた。
「せいぜいあの世でニャンニャンしてな!」
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