息子編
第6話
『ジンギスカンでも食ってろ』
そんな言葉が、この掲示板では横行している。
あくまでデブへの誹謗中傷の言葉であり、本当に食べろ何て事本当は考えてもいないだろう。
俺が今、ジンギスカンを食べていることも知らずに『ジンギスカンでも食ってろ』だと?
愚かな奴らだ。
さて、今日は女神スレに光臨もないみたいだから早めに寝るかな。
ジンギスカンをしたガスコンロなどは部屋の入り口近くに置いておけば母親が勝手に片付けに来るだろう。
俺は敷きっぱなしでこの頃茶色がかってきた布団に入り込む。
仰向けになると嫁が天井から俺を見ていた。
「あんまり見るなよ照れるじゃないか」
『べっ! 別にあんたなんか見てないんだからね!』
「そうかい? じゃあ今日は横を向いて寝ようかなー」
『えっ……』
「嘘だよ。一緒に寝ような」
『……いじわる』
誤解されないように言っておくが今の会話は俺一人で嫁の声を出している。
つか、出さなくてもわかるんだけどね?
それでも言葉にしないと伝わらないことって沢山あると思うわけ。
だから俺が言葉にしてるだけだから別におかしくないし。
おかしいと思う奴の方がおかしいし!
「くだらん」
ニートを始めた頃は毎日張り合いがあったのだが最近はマンネリ気味でつまらなくなってきた。
ニートだって色々悩みがあるのだ。
今回のアップデートでせっかく作った武器の性能に大幅修正が入って何だかパッとしない武器になってしまったり。
リアルでも友達少ないのに、オンラインゲームでも段々仲間が減ってきていたり。
「不思議なぐらい、嫌われるんだよな……」
昔からそうだった。
小学生の頃は絵を描くのが楽しくていつでも絵を描いていた。
休憩時間には友達が俺の周りに集まってきた。
でも、中学生になってから何かが少しずつ変わってきた。
どんなに上手い絵を描いても皆が俺を避けていった。
高校に入ると世間的にいじめといわれている物を始めて体験した。
何もかも全部嫌になって学校も辞めて、家に引き篭るようになっていた。
今はどうにか気のあっている友人と時々行く秋葉原だけが俺の外出になっている。
これから、何てわからない。
ただただ、親が働いているうちは安泰だなと勝手に安心している。
「おわっ!」
急に大音量の音楽が流れて上半身を起き上げる。
頭のあった場所を見ると携帯電話からけたたましい音の電波ソングが流れていた。
携帯を開くと数少ない友人からだった。
着信ボタンを押すと『こんばんはお兄ちゃん』と野太い声で言われ、少し不快な気持ちになる。
「もしもしどうなさったロキ氏」
いつもの調子で答える。
「実はですね論破氏、今回我がギルドが遂に明日一周年を迎えるのでありますよ!」
「もう、そんなになりますか、じゃあ明日はイベクエ周りでもしますか?」
「ふふふ、論破氏話は最後まで聞く物でありますよ……論破氏我がギルドの男女比をご存知か?」
「気にしたことがないのでわからんでありますな」
「いかん! いかんですぞ論破氏! そんな事では嫁に愛想を着かされてしまいますぞ!」
そこら辺はいらんお世話だ。
「答えは男性五人の女性五人でありますよ」
「そうなんでありますか」
「そこでで、ありますな、今論破氏を除く九人でボイチャをやっておったんですが」
何で俺が除かれているのかの説明も欲しいのだが……
「満場一致で明日の夜に、上野でオフ会をやろうとなったのでありますよ」
「そう、よかったでありますな」
俺がそういうと電話越しから『ずこーっ!』と声がした。
「論破氏何を他人事のように言ってるでありますか! 論破氏も参加するに決まっているではありませんか!」
「そうなのでありますか? てっきり小生は誘われないのだと思っていたのでありますが?」
ボイチャ誘われてないし……
「論破氏、よく聞くでありますよ? オフ会とは言っても男女の数は同じ、これ何を意味すると言えば合コンでありますよ!」
「はぁ……」
「はぁ、ではありませんぞ! 小生達魔法使い予備軍にはかつてないチャンスでありますぞ!」
「それに小生も参加しろと?」
「決まってるであります。元来合コンとは男女の比率が五分で行われる物でありますからな」
あまり乗り気ではないけど、オフ会事態に興味がないわけでもないので、断るのももったいない気がする。
「では、一応小生も参加でいいでありますよ」
「おっふう! さすが論破氏話がわかるでありますな! そこで、明日の夜の七時に上野駅の前で集合して近場の飲み屋さんに配流であります。服装でありますがいつものようなダサい物はNGでありますよ」
「ん? よく意味がわからないであります」
「んふふー駄目でありますな論破氏、オタクといえども女性の前では一端の紳士であれと、かの有名な織田信長も言ってるでありますよ」
「でも某そんなおしゃれな服など持ってないでありますよ」
「ググれとだけ言っておくであります。では某はチャットの続きをするので」
いきなり電話を切られ、マイク越しから辺鄙な音が一定感覚で流れた。
オフ会か、長いことオンラインゲームはやっていたが初めての経験だな。
期待と不安を抱きながら俺は布団に横になって目を閉じた。
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