第6話 咲のウエディングドレス

その日は、やって来た……。

父である、直克なおかつの遺言でもある挙式が始まろうとしていた。



咲は、どんどんと変身していく。

そんな咲を見守る和哉かーくん

咲は、父親の事ばかり考えていた。もちろん和哉にも分かっていた。



2人は手を握り合い、


『あぁ。そうだ、分かっているさ。咲を幸せにするよ。大丈夫だ。』




挙式が始まると、2人は中継し出した。


たまに友人達が、代わる代わる

式の様子を撮影もしてくれていた。





その頃……父親の直克なおかつは、昏睡状態になっていた。



iPad で挙式模様をルーキーが

一生懸命に音量を調整したりして

聞かせていた。





『石井さん!!始まりましたから!!も少しだけ、、、神様!!どうか、、、!!』




本来ならば、集中治療室に入ってはいけないのだが。


ルーキーの聖人まさとは特別許可を得たのだ。




聖人まさとは涙でぐしゃぐしゃだった。


ルーキーの声にならない声が静かな病室で響く。






石井は、遂に昏睡状態から危険な状態へと急変するのだった。



看護婦達が、ドクターを呼び

バタバタと、慌ただしく現場は変わっていった。



聖人まさとは両手を懸命に合わせて神へと願っていた。



(頼む!!頼むから!!!)





その頃…………直克なおかつは、眩しい光に包まれて、、、



まだ産まれてくる前の孫とご対面をしていたのだ。




《おじいちゃん?僕を可愛がってくれて、ありがとう。》



《あぁ……もう咲の奴、孫が出来たか?》




《ううん。まだまだだよ?僕は後1年後にママから産まれる予定の優木ゆうきって言うんだよ?おじいちゃん、なぜ苦しいの?》




《ハハハ。おじいちゃんはな?

咲……いやいやママに最後まで迷惑かけてしまったよ。ダメなおじいちゃんだなぁ?》





《そんなことないよ?僕はおじいちゃんの事大好きだな?》




《ハハハ、そうか!ありがとな?逢えて嬉しいよ!そっか。男の子か、、、》





《おじいちゃん、おばあちゃんの事を頼むね?僕はずっとおばあちゃんの話を聞いてたんだ。》





《なんて言ってた?》




《ふふふ、僕とおばあちゃんの秘密なんだよ?》






《そっか~!こりゃおじいちゃん1本取られたなぁ……ハハハ》




《僕がママとパパを守るから。

だから、おじいちゃんは安心して?》





《お前がかぁ?出来るか?》





《うん。男と男の約束だよ?》








直克なおかつは、生と死の狭間で孫に対面出来たのだが……



かすかに

の歌を優木と歌いながら、小指を絡ませていた。







《おじいちゃん!!

  また逢おうね!!!》







その時だった。



愛娘の咲を残して……


父親の直克なおかつは……







静かに息を引き取った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る