第5話 父の願い
挙式を、3日後に控えた娘の咲と
かーくん。
神妙な面持ちで、お互い相談していた。
『僕がキャンセル料全額払うし。
お父さんの治療費も払うから。
だから咲は、心配し無くて良い!』
『かーくん!!でもっ……。』
『良いんだ……。咲?僕をもっと頼ってくれて良いんだよ?』
『かーくん……。』
咲は、俺が倒れてからというもの泣いてばかりいた。
そんな咲を、
咲は、逃げなかったかーくんを、とても尊敬し尚更、愛が深まっていく。
咲は思い知る……。
かーくんを選んでよかった。と……
病室へと2人揃って入ってきた。
咲は、歪んだ笑顔だ。
無理して笑っていた。かーくんは
咲を抱き寄せながらも
『大丈夫だ!大丈夫だ!』
とまるで自分に言い聞かせるような言葉を、咲にかけていた。
俺は痛み止めの点滴を受けていたので、少しだけ話が出来た。
数日間で、やつれにやつれた
俺を見るなり、かーくんは心配そうに、俺に話した。
『挙式は、延期します!俺は
咲さんを必ず幸せにしますから!
お父さんは何も考えず治療受けて下さい。』
俺は、その話を聞いて痛感した。
自分のせいだと……
俺は悔しくて、仕方なかった。
だが、かーくんは続ける。
『お父さんのせいでは無いですから。僕らが話し合ったんです。』
『ですから。お父さんは……』
かーくんは顔を歪ませながら。悔しい感情を押し殺していた。
俺は、たどたどしい言葉使いで
かーくんと娘に伝えた。
『式は、挙げてくれ。娘の晴れ姿が、見たいんだ。どうしても。
最後になるかも知れないから。』
かーくんは……しばらく複雑な表情を浮かべていた。
そして考え込むと、
涙を流しながら、俺の手を握ってきた。
『お父さん、ありがとうございます!僕ら、ありったけの気持ちをお父さんに送ります!』
咲は、俺の事を心配していたが
挙式続行と決まった今は
かーくんと咲、手を握り逢って、
喜びを噛みしめていた。
『お父さん!頑張って、生き抜いて、、、私も頑張るから。』
『あぁ。そうだな……ハハ……
後は生き延びれたら奇跡だな?』
『孫を抱きたかったなぁ……。』
『孫と風呂に入って、キャッチボールしたりして……ハハ……
おじいちゃん、お年玉、なんて
言われたりして……。
グッ……ゲホッ……ゲホッ。』
『お父さん!無理しないで!
もう、分かったから。分かったから。』
『ハハ……大丈夫だ……ゲホッ、
少しだけ……眠らせてくれないか……ゲホッ。眠いんだ。』
痛み止めも、効かなくなってきたなぁ。確か『モルヒネ』とか
話してたなぁ、
気が遠くなる頃……。
15年前に、亡くなった妻の声が
聞こえてきた……。
『お父さん!お父さん!まだ早いわ。』
姿まで、見えてきた。
大きな川の向こう側に妻が立っている。
『お父さん!まだ来ちゃいけないわ!!まだまだよ?!咲を頼んだじゃない!あなた、しっかり!』
《あぁ……この川は渡れないのか?お前に逢いたかったよ?
香奈子。久しぶりだなぁ、、、。》
俺は……その後……
個室へと移動された。
集中治療室には、俺の命を繋ぎ止める為に……
体中に管が付けられていた。
挙式まで……後1日……。
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