第3話 父親として……

俺は、咲の居ない数日間を……

昼は会社、夜は咲への手紙を書くために試行錯誤していた。


頭をかきむしる。



出だしから何を書こう?

何を伝えるべきか?



考えても考えても、答えが出ない。

俺は、咲の真似をしてコーヒーを

淹れてみよう。と


思い立った。



書斎からキッチンへと下っていくと、咲の香りがした。


まるで、居るかの感覚に陥る。



俺は深く息を吸い込むと……


『よし!やるか!!』

と気合いを入れた。



俺はいつも何気なく咲の淹れてくれたエスプレッソを飲んでいたが……



今日は、キリマンジャロなんて

良いよなぁ。と……甘く考えていた。


豆を挽いてみるのだが、

違和感が拭えない。数十分格闘してみるのだが。



お湯を注いで、味見しても



また最初から、やり直す。格闘数十分。

またお湯を注いでみる……。




よし!もういっちょ!!


格闘数十分。



そうこうしているウチに、キッチンがコーヒーの豆だらけになり

めちゃくちゃな状態になってしまった!



『しまった~!咲に怒られるぞ?これはいかん!』



台拭きで豆や粉をふき取り、

掃除機をかけるのだが…………


なかなか何十年ぶりの事なので上手くいかない。


『俺は掃除すら出来ないのか?!』


少しだけ癇癪を起こしながらも

ようやく片付けが済んだのだが。



結局、納得いくキリマンジャロには、有りつけなかった。



『咲は、凄いな……?』

ポツリとため息交じりに独り言が出ると……


『なんか疲れたから寝よう。』




七面鳥を冷蔵庫へ入れて、明日

温め直して、残りを頂くか?と



早々にシャワーを浴びて、

寝室へと急いだ。


季節は春だと言うのに……まだ

薄ら寒いのだ。


『風邪ひいちゃうぞ。これは、』


湯船を仕度するにも時間がかかるので、入れなかった。



寝室のエアコンをONにして……


いつの間にか深い深い眠りに

ついてしまったのであった。




もちろん、コーヒーの小冊子は

元の場所へと戻してあるのだが?

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