第8話 魔法少女はヘコタレない

 カクカクシカジカ……


「わかった。まずは、ハルくんのお父さんお母さんに謝りに行こうか」

 父は私の説明になってるかも分からない、ムチャクチャな話を受け止めてくれた。

 残念ながらハルは私としか話ができなかった。


 カラン、カランとハルの家

「こんばんは、いつもお世話になってます。今朝は妻を送って頂き助かりました」

「いいえ、こちらこそハルの勉強をアキちゃんに見てもらって助かってます」

 父とおじさんが挨拶すると、間を空けずに

「実は、ハルくんが大変なことになってしまい、本当に申し訳ありません」

 母が深々と頭を下げて謝る。父は母を支えるように肩に手を回しながら同じように頭を下げた。


 背中から汗が噴き出る。親の謝り方を見て事の重大さに気付く。


 真剣な雰囲気を察すると、おじさんは電子タバコを置いて

「まあ、中に入って下さい。私にも責任がある話だと思いますので」

 魔法少女の私を見てそういった。


 家族同士で謝りあって、話し合った結果。


 今夜、闇を祓ってみる。

 明日、サンマをお供えする。

 この2つが決定した。


 日が落ちたとはいえまだ暑い中、全身が隠れるコートを着て、魔法少女の服を隠す。ハルネズミをコートのポッケに入れ、手提げカバンにステッキを隠すようにして学校へ向かう。

 

 ネズミのハルと二人きりの通学路。

 頭が重い、悪いドキドキが足を生やして、ドスドスグルグル頭の中を走ってる。


「アキ!聞いてるか?一生飼ってくれるんだろ?」

 丸まってる背中を叩くように、はじけるような声が頭に響く。

「しっかりしてくれよ、エサを忘れて餓死はゴメンだぞ」

 シャンとする。まずは闇を祓うことに集中だ。

「まかせなさい!」

 今夜は月が明るい。


 学校に入る前から、ハルネズミがこっちっぽいとハナで指す。

 ハナに導かれるままに進むと、校舎裏にたどり着く。黒い光を放つ煤汚れが校舎の壁にべったりとへばり付いている。試しにステッキでこすると消えていく。

 ハルネズミがあちこちと見つけ出しては、私がお掃除感覚で拭いていく。高い所もピョンピョンと飛び跳ねては闇を祓う。せっかくならステッキで空が飛べたらいいのに。


 小一時間ほどで祓い終わる。

 じわりと湿ったドキドキがよみがえる。

 帰り道

 喋る

 喋る

 喋る

 止まらない、止めれない。

 私が延々と口にする独り言に、ハルはずっと、ずっとうなずいてくれている。

 ネズミになったハルが私のことばかり心配してるのが分かってしまって、肩が勝手に揺れて涙がこぼれた。


 ハルの家では、神社の古い書物に駅前の開発計画や堤防開発時の資料等々を読み漁り。さらに、変身伝承を片っ端から調べる等、少しでも現状をよくするきっかけを探してくれていた。大人の本気である。そこに、私とハルも参加する。

 悩んでも仕方ないが、足掻かなければ進まないのだ。


 リビングでみんなで重なるように寝てる中で目が覚める。

 ハルがサンマを焼いてたときの姿で眠っていた。

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