第7話 魔法少女は愛されてる

 ネズミになったハルを手に乗せる。

 ハルネズミのチューチュー声の意味が分かる、さすが魔法少女。

「おまえが神様の頭叩くし、罰でも食らわないかと心配して、丁重におもてなしをしたのになにやっとんねん!」

 私を心配してやたらネコ神を接待したり、私のツッコミを止めたりしてたのね。

 それなのに、私が場外ホームランしちゃったのかー。

 アワアワだけのハルはもう居ないのね。本当に反省してます。

「ごめんなさい」

 もちろんネコ神に対しても。


 とはいえ、どうしようもないので荷物をまとめる。ハルを頭の上に乗せ、大きなリュックにクーラーボックスを肩にかけるが、行きと違い重さを全く感じない。

 軽く飛び跳ねる。

 あっ、行けそうと、階段に向かって駆ける。

 ハルが気づき絶叫が私の頭にこだまする。


 階段を駆けおり、いや飛び降り、いや階段の縁をつま先で掴んで下へ跳んではさらに加速する。


 とんでもない速度の中、

「責任取れよ!」

 ハルのヤケクソな声が頭に響く。

「本当にごめん、一生飼ってあげるから」

 言葉ないやり取りと同時に着地する。

 ぶわっと風が起こると同時に体操選手のように手を挙げる。

「10点」

 ハルネズミはぐったりとして返事もなかった。

 悩んだって仕方ない。


「ただいま」

 私の家に帰ってリビングへ

 クラッカーが鳴る。頭の上から落ちそうなハルネズミを戻してあげる。

「「お誕生日おめでとう」」

 父と母の祝福と、色画用紙を切り抜いて作られた「ハッピーバースデー」、100均のお誕生日バルーン、折り紙のチェーンが私を迎えてくれた。


 喜びの笑顔からの拍手は音を立てずに止まり、まるで拝むかのように私を見る。

 その顔には生まれて初めて見る表情が浮かんでいる。


 なにせ、リュックとクーラーボックスを抱えて、魔法少女コスプレ、ステッキ付き、頭にはハルネズミのクラッカーテープ添えである。


「ハルくんのこと好きなのは分かるけど、なんでも言うこと聞いてちゃダメよ」

 母がわりと本気で心配そうな声を上げる。

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