51、弟二人と昼食にて①

デュプルとダブリュの弟二人と個室で昼食を取っていると、開け放たれた窓の外を誰かが通り過ぎ、すぐに戻ってきた。

「デュリュ!匿って!」

こちらの返答も聞かずに個室に飛び込んできて、窓を閉めると、何やら取り出して発動させている。

すると、窓の外で何やらバタバタと聞こえたが、すぐ遠ざかっていった。

「ふぅー、助かった……おっと、お姉様もいるとは、大変失礼しました」

振り返りこちらを見てから腰を折る姿勢に、自身の貴族スイッチが入るのを感じたアン。

「かまわないわ。私は席を外すのでここはお使いになって」

二人を愛称で呼ぶ様な友人が来たのだからと、席を立とうとすると二人からダメ出しされた。

「ダメ、まだデザート食べてないよ」

「まだ時間あるし、こいつを追い出せばいい」

「えー、もうちょっと匿って欲しいのに」

「姉さま優先だって知ってるだろ」

「ちぇー、姉コン双子め」

そこまで話せる相手だということに、貴族スイッチを解いた。

「では、みなでティータイムにしましょう。アナタの名を聞いても?」

「お初にお目にかかります。シキュカンバー シガヌスと申します。御弟様方には懇意にして頂いています、しがない商いをしている商人でございます」

学園の制服を着用している商人は、まるで商人のかのようなお辞儀した。

すると、ゴテイサマと呼ばれた二人が笑い出した。

「ゴテイって、おまっ、お前の口からそんな言葉が……」

「似合わないこと……すんなよ……」

二人の気の置ける友人だと知れて、嬉しさが募る。

「こちらこそ、二人の友人に会えて嬉しいわ。シキュカンバーさんは何を注文……」

おもむろに懐に手を入れたシキュカンバーの手が懐から現れると、ポットとカップが現れ、更に手を入れてバスケットボックスを取り出した。

「シキュとお呼びください。私のはここにありますので、お構いなく」

「あら、よいポケットをお持ちなのね」

「……くーっ、失敗かー。眉一つ動かしてもらえなかった」

「姉さまを驚かそうなんて、無理だよ」

「俺達の姉さまなんだから」

「絶対にいけると思ったのに!お姉様は手厳しい」

「ちょうど空いてしまったの、そちらを頂いても?」

自身のカップを少し差し出すと、シキュは額に手を当てた。

「完敗です!恐れ入りました」

初めて会った人の持つポットの中身を所望する、即ち信頼したの意味をキチンと受け取ったシキュに笑みを送った。

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