48、設立で依頼増
『学院設立、今季よりテスト始動』
学園の約1キロ程先でカンコンと作られていた学院。
出来まして、テスト始動で前年の卒業生や若手研究者などがテスト生徒として集められた。
とのことで、学園の学食にいつもより多めに人が入ってきた。
勿論、あちらにも学食はあるが、まだテスト生と人数が少ないからと学食はこちらでとなっているようだ。
どこそこの研究所での誰それだとか。
去年卒園して行った誰それだとか。
いらない情報が気にしてなくても耳に入ってくる。
それらを無視し、ギリギリ確保した席に座りサクッと食べ終わったアンは、喧騒どこ吹く風で学食を出た。
喧騒から離れて落ち着きたくなり、少し遠出の散歩に出たのは致し方かないだろう。
その時、反対から学食へと向かう二人組とすれ違った。
「学院に入ることに決めたよ」
「ああ、僕もだ。まだ学生でいられる機会をみすみす逃してなるものか」
「理由が不純ではないか?」
「戻ればすぐに国事に関わさせられるじゃ……」
そんな話が聞こえ、何気にチラリと顔を見てみたが思い当たることもなく、その場を去った。
そんなことがあった週末、ギルドに行くと掲示板がいつもよりも採取依頼と護衛依頼が多くなっていた。
◯◯花の採取、花を全く潰さず、とか。
◯◯薬草採取、根を切らず、又は根を土ごと、とか。
◯◯魔物を丸1頭、傷は突き傷のみ、とか。
……と大層面倒な指示付きの依頼ばかり。
周囲の冒険者は、それらの細かな指示付き依頼を流し見で、適当な依頼を剥がし掲示板を去っていく。
今日もウィンの護衛。
そして、アンの手元には何枚も依頼書。
「もしかして、あの依頼受けてきたの?」
「おまけポイントあると言われた」
薬学では、傷のない花びらを使ったり、薬草の根の細い部分を使ったりする。
だから面倒と言えば面倒だが知ってるが故に、オマケが付くなら喜んで受けるというもの。
「さすが。そういうの学院の研究者からの依頼だって」
「聞いた」
「ウィン、卒園したら研究所に内定していたけど、その研究所が学院に分室を立ち上げたから、学院に行くって」
「ふーん」
こちらも依頼書を見つつ、採取に取り掛かった。
花をの茎を採取したら、必要本数の穴を開けた板に挿し、さらながら花の首吊り板を作り出していく。
根が必要な薬草は、薬草の根の空間を水魔法で泥に変えると、スポっと切れずに抜けるので、必要本数採取。
最後に水たまりを作り、そこへ根を入れ、洗ってしまう。
ウィン程ではないが、採取にはこだわりがある。
使う人がすぐに使える様に!
薬学授業で薬学に躓く人がいるが、それは薬学で使う植物の状態の維持だ。
余計な土が付いていると、効力が下がったり、デバフが付いたりする。
花びら一つでも傷があると、効力が下がる。
それらの管理に手間取り、不人気の要因となる。
だから、ウィンのように採取に必要以上の精神力が持っていかれるのだ。
「それ、ウィンに見せてあげて」
イラがアンの採取に目を見開き、ため息交じりで告げて来た。
「これを?」
「効率とはこういうことだと、分からせてあげて」
「そう?」
ウィンをなんとかこちらに向かせ、その方法を見せると頭を抱えた。
「あぁー、なんていう……アン、貴方はなんて……でも、それだと魔力が根に付着してしまわない?」
「地中の水分を集めている、その水分の外周を波状に半回させるのを何度も繰り返すと、中も動くから泥を攪拌させるとこの通り。魔力は周りのみだから付着はない。この最後の洗いも同じで周りしか回してない」
簡易洗濯機と言いたいが、洗濯機はこちらにはないので、適当に説明。
「あぁー、なんていぅーー……その方法、今度発表しない?」
「断る。ウィンが変わりに発表しておいて」
「うー、画期的なこの、あー……」
ウィンが採取ではないことに、夢中になるという珍しいことが起きた。
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