47、新たな出会い 3

学園では年に一度、三学年による様々な発表会が執り行われる。

昨年は、わざと行かずに避けた。

アトリエや牧場などもの作り系のシミュレーションは好き。

ゲーム内の職人系は、始めたら沼って飽くまでやり続ける。

そんな自分がそちらに手を付けると、学業もポイ活そっちのけにすることは目に見えてるから、それらは後回しと我慢した。

鍛冶屋や防具屋、魔導具等などの店も極力最低時間で去るようにしていた。

だが、日曜の午前に様々な話を聞いているとそちらへの我慢の枷がチクチク刺激され、そんな時に今回の薬学発表で、つい足を運んでしまった。

すると、これがテンプレかというものがそこにあった。


「えっ?!……」

「んっ?……なんで?!」

「静かに」

イラ、ウィン、アンの各々の邂逅の反応である。

もしかしてと考えていたが、そう思ってしまうことがフラグとかのアレなのだろう。

日曜日の午前のみの護衛だから学生の可能性は考えていたが、まさかの邂逅である。

薬学発表会場を見つけて会場内を見ていたところ、そこにいた。

「……話は日曜に。……先輩こちら見せて頂いても構わないかしら」

「えっ?あ、えーっとどうぞ……質問があればいつでも……」

「……あーっと、私はそろそろ帰るから、しっかりな」

「う、うん、来てくれてありがとう」

去るイラに手を振るウィン。

三学年の先輩でした、この二人。

見終わり会釈去り、他の発表も見回ってから、その会場を後にした。

ちなみに翌々日の剣術大会には、イラが出ていた。

軽く流して一回戦で負けていから、実力隠しの方。

シェルに調べさせようかと思ったが、今回はあえて止めておいた。


そんなことがあった週の日曜は、会った途端に詰め寄られた。

「聞いてない!後輩って、てっきり年上だとっ」

「ウィン待って、落ち着こう、な」

どうどうとイラ宥められ、落ち着いたところで問い掛ける。

「先輩と呼ぶ?」

「それはいらないけど……それより貴族がなんでっ?」

「星を得る為。こちらとして二人を詮索する意志はない。それよりも今日はどこに行く?」

依頼主と冒険者としての数回で気の良い関係が出来ている。

内部事情を知ったからと何かが変わるわけでもない。

「……でも、いいの?」

「互いにハッキリさせないと依頼に支障がきたすというなら、仕方がなく言うし聞くが、必要ある?」

「それはないけど……」

イラがふーっと息を吐いて、手をパンと軽く叩いた。

「私は好奇心で色々聞きたくなるけどな、お互い様だし!ほら、時間なくなるから行こう」

割り切ったアンとイラに、まだウジウジしているウィンで今日も薬草採取。

採取になったらウィンはその他を忘れるからコレでいい。

イラとの暇潰しの会話中に、学食の何が好きかとか、先生の話が混ざり出したが、それはそれ。

共通認識のモノがあると更に仲が良くなった気もするが、それはそれ。

若干、この毎週の依頼料はどの財源から出てるのか気なったが、ポイっと捨て置いた。

今日も元気にポイ活に励むだけだ。

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