44、友人……②

「あの、モーレイ様……」

ストレート女子改め、バースツリー嬢が呼んだので、そちらに顔をむけると、なぜかキラキラと評して良いと思われる浴びたことない視線。

「はい。どうしました?」

「あの、私達……そのモーレイ様の友人と……」

そこでハタっと気が付いた。

取り巻き③改めキャッチアン嬢が友人であれば、三人も友人となる。

この世界で、家族やシェル以外に近しい人、友人……。

話の流れで、だったがここはそれでよいと腑に落ちた。

「ええ、私達は友人ではありませんか、違いましたか?」

「いえ、そうおっしゃって頂き、嬉しく思いまして。あらっ……チア、時間ではなくて?」

「あっ、モーレイ様。先にお暇させて頂きます。その準備など……で。皆様も失礼します」

「ええ、じっくり準備なさい」

「いってらっしゃい」

「また、明日」

去っていくキャッチアン嬢は、チアと呼ばれているらしい。

バースツリー嬢がこちらを振り返る。

「あの、この後お時間ございますか?」

ここでギルド行きたいから時間はない、とは言わない、友人だもの。

「ええ、今日は丁度空いてますわ」

これもある意味縛りプレイ?と受け取ってしまうのは、まだ友人という言葉に不慣れなせいと理解している。


「……それと先日の女生徒への護身術の授業を取り入れるのもよいと……いうお話を覚えていっしゃいますか?」

様々な話のあとに出てきて残念ながら忘れていて、誤魔化そうと思ったが、彼女たちは友人だと思い返した。

ここは素直に述べてみようと。

「私ということが、忘れておりましたわ。うっかりですわね」

「モーレイ様でも、うっかりなどとあるのですね、いつも完璧にこなしておいででしたから」

「私もただの学生ですわ。忘れ物もありますし、先日なんて授業の場所を間違えましてよ」

そんな弱みを振ってみると、三人の肩の力が抜けた雰囲気を感じた。

これは友人としての接し方が正解なのだと、ふっと安堵した。

全てを見せるにはまだ自分の防御壁に厚さはあるが、今一人足りないがこの4人へは、少し力を抜くこともありかと。

前世も合わせて、高らかに友人とくくれる人間はいなかったから、接し方も不格好になる。

だが、それもこの4人には出しても良いと思う。

シェルも言っていた、失敗は成功の糧になると。

前世では成功の元と言われていたが、意味合いはほぼ一緒。

失敗するべきなのだ、ある意味二度目だが人生を失敗なしに学ぶことは出来ない。

魔物と戦うにも、民家にお手伝いに伺うにも、失敗や謎を掻い潜って行うよりも、指摘され、直されてこそなのだ。

だから、この4人は学園で初めて……前世も合わせて普通に初めての友人。

ダメも良いも見せて、今の自分を定着させよう。

選択肢ばかりのRPGにはなかったことだが、ここはゲームのようでゲームではない。


今のこの時間、この軸が、我の人生なのだ。

と再確認した今であった。

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