42、噴水博覧会 3
「あらっ」
「まぁ」
ストレート女子と取り巻き①②が、その合図に少し驚きの声を上げた。
「……モーレイ様、流石ですわ」
何が流石なのだろうか、と思いつつ、そこで何?とは聞いてはヤボなので、ここはまた一つ言っておく。
「もう一つ、先におっしゃった方々などは、裏表の使い方がお上手な方、それも処世術ということもあります。焦ることはないですよ、またこのような会もありましょう。今は、自身の目を鍛える場……授業としてはどうでしょう」
取り巻き①②は、お目当ての方への挨拶回りと離れ、今はストレート女子と二人だけになると、ストレート女子が胸元に手を置きこちらを向いた。
「モーレイ様……感謝致します」
「世間話しかしておりませんよ」
ストレート女子はまだ一人も聞いてきていない、というかその意思はなさそう。
「あの……近頃の私を様子を見た家族から許しが出まして……」
「あらっおめでとう!」
「これもモーレイ様が背を押してくださったおかげですわ」
「やりたいこと、なりたいものが出来たのは、貴方がそれだけ周りを見れるようになったからよ」
「少し前まで……王妃になりたいなどと、高望みを抱いておりました。でも、モーレイ様が以前、王妃に自由はないと聞いてから、しばらく調べましたの。そうしたら、本当に自由はなく、しかも式典時には……」
「椅子にパンツにおしりに回復魔法を施して長時間座る、ですわね」
「ええ、それに食べたい物ではなく、毒見済の冷えた味の薄い宮廷料理。トイレでさえ誰かと一緒などそれらを自分が、と考えたら無理と思いましたの」
「あれを自ら望む人がいるなら、見てみたいですわ……」
「私にはそのような生活は出来ませんが、あの方々を補佐することは、私が磨いてきたものを発揮できると思いましたの」
ふっと、同じ職場になる……同じになるかは分からないが、王宮という同じ場所に行くことになるミリーを思い出した。
「ああ、先日知り合った方は今度の……いつだったかしら、王宮侍女試験を受けると仰言ってましたわね」
「再来月の試験を!?あの、もし宜しかったら、その方を紹介してもらえませんか?」
「ライバルですわよ?」
「ライバルですが、切磋琢磨していく同士ですわ。同じ志を持つ方がなかなかいなくて」
「先方に聞いて、よいとおっしゃったら紹介させてもらうわ」
そんなんで、噴水博覧会はこちらとしては何も得ることもなく終わった。
そして、後日。
ミリーとストレート女子を会わせたら、幼い頃に会ったことある知り合いだった。
しかも当時、お姫様に憧れたストレート女子と、王宮侍女に憧れたミリーは、仲良く二人でお姫様ごっこをやったらしい。
今度は、王宮侍女へと切磋琢磨していくのだと。
案外、世間は狭かった。
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